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黄色の毛虫はシンジュキノカワガ。大量発生する黄色い毛虫の毒の有無や不思議な生態などを紹介

近年話題の黄色と黒の毛虫

秋も深まり虫の話題も尽きてきそうな時期ですが、このシーズン終わりの時期に話題となる毛虫がいます。

夏から冬の初めごろにかけて縞々の幼虫を見つけたらきっとシンジュキノカワガ

黄色い派手な模様に黒の縞縞模様、長い白い毛をもつそれはいかにも危険な幼虫という感じです。

この虫の正体はシンジュキノカワガ。近年その発生が話題となっている注目の昆虫です。

シンジュキノカワガとは?

シンジュキノカワガは分類もよく分かっていない中国原産の蛾の仲間です。

一応コブガ科とされているらしい。大型のガである。

遇産種という扱いであり、時折発生しているのが見つかるという幼虫でした。

成虫の写真はありませんが、黄色い非常に綺麗な翅と、樹皮に擬態するかのような模様を持つ大型の美麗種です。

幼虫は主にシンジュ(ニワウルシ)を利用し、およそ夏から初冬頃にかけて目にします。

ニワウルシがパイオニア植物として開発された跡地などによく生えることから数も多く、これに合わせてシンジュキノカワガが大量発生しているのが話題となります。

遇産種と外来種の食草による珍しいマッチング

シンジュキノカワガは遇産種ということで元来は時折中国から飛来していて冬季の寒さなどで死滅するライフサイクルを持っていたようです。

関東では2023年ごろに突如出現。埼玉東京、続いて神奈川にも登場。

シンジュキノカワガは日本ではニワウルシを利用しているのですが、このニワウルシは在来種ではなく中国原産の外来種であったりします。

ということは異国の地においてどちらも中国原産の植物と昆虫が奇跡的に再会を果たすという面白い自然の繋がりが見れることになります。

近年では温暖化の影響か不明ですが、冬を越して定着していると思われる個体群も見つかっているようで、加害性が気になる方も多いかと思います。

例えば外来種のクビアカツヤカミキリは桜に甚大な被害をもたらしていますが、これは外来種による在来種への加害ですね。

現在確認されているのは外来種のニワウルシの利用のみ

シンジュキノカワガは中国から飛来した個体が外来種の植物を利用するという形なので個人的には脅威度は低いのではないかなと思います。

もしもニワウルシ以外にも使用する植物があり、その対象が在来種であるならばこの幼虫はかなりの量発生し、丸裸にしてしまうぐらいよく食べるとされていますので問題になるかもしれません。

生き物界隈で話題の蛾

シンジュキノカワガはここ2,3年で非常に話題となっているようです。

幼虫が派手、繭が音を出す、成虫がとてもきれいというようにどのステージも特徴がある

毎年秋ごろにかけて成虫が出現するのですが、大型の蛾で色合いが目立つのと大量発生するので気になる方が多いようです。

この蛾は遇産の通り、以前は非常に珍しい蛾の様でした。

昨年には埼玉県で発見されてそれなりに発生していたらしく、話題度が上がり発見の機会が増えたのか神奈川県や東京でも部分的に見つかっています。

私の住んでいる神奈川県においては記録は乏しく、2025年に川崎における採集例が報告されている程度でいつかくるかな~程度に思っていました。

来るならここだろうというところに出現した

ところが偶然お会いした虫仲間がシンジュキノカワガがいたと教えてくれたため、神奈川県西部におけるシンジュキノカワガの発見例となりました。

いつか来るだろうと思っており、このエリアで見つかるならシンジュが多いここだろうな~と勝手に妄想していましたが、近しいエリアでの発見となりましたね。

シンジュキノカワガの発見事例

シンジュキノカワガの西部当地における記録はあるのかどうか不明です。

見つけた繭は2個のみ。状況から見るに今年飛来したのではないか。

そのため現地にてこの虫の出現状態はどんなものかというのを見てみることにしました。

知らせてくれたのは幼虫1匹でしたが、現地で有望そうなポイントに足を運べば追加分が得られるかもしれません。あわよくば成虫も...

シンジュキノカワガは近年大量発生することも知られており、石川県の事例では随分な数が見られたようです。

発見されている埼玉や他地域の例でもシンジュに多数の幼虫が付いている様子が写真で上がっており、あれだけ出ていれば標本用にとってもいいよなと思っています。

思いのほか幼虫は見つけられず、成虫をとれるかどうか。

ここなら良そうだというあたりを付けていた場所に向かって木を見てみると、10月の終わりということもあり、シンジュの葉が落ちています。

うーん、幼虫の影響かただ落ちただけかやや判別に困りますね。

幹や葉には幼虫が大量発生しているという感じではありません。

幹や枝に注目しても繭らしきものが見えません。

他の事例を参考にすればもっとありそうなものだけどはて?と思っていると、ようやく幹にジグモの巣みたいなものを発見します。

この繭は突いても動きがなかった。寄生されているのだろうか。

多分これが繭ですよね。これともう一つを見つけて繭は他に見つかりませんでした。

幼虫に関しては近くの人工物上に計4匹の追加を得て痕跡は繭2幼虫5です。

とても大量発生と言える状況ではありません。しかも徘徊しているシンジュキノカワガの幼虫は終齢ではなさそうです。(後日終齢でした)

後日、蛹化を確認。終齢であったらしい。

これを見るに幼木に発生したシンジュキノカワガが食樹を食べつくして人工物上に徘徊しに来たという感じでしょうか。

もっと幼虫も繭もあって良さそうなものですがどういうことでしょう。

侵入初期のシンジュキノカワガ?

これらの要素を捉え、さらに前年度は発見されておらず、地域的にもオフィシャルな発表がないことを踏まえるとこの西部地域における記録自体がかなり新しいものなのではないかなと思われます。

3齢もしくは4齢と思われる幼虫。終齢よりだいぶ小さい。

大量発生する虫が部分的な先駆けとして見つかる例には心当たりがいくつもあり、例えば相模原におけるキアシドクガの大量発生例も数年かけて発生数がピークに達しました。

アカアシオオアオカミキリも同様で、まず近隣のエリアに先遣隊が微量見つかり、兆候を見せた後に一気に出現するのが見られます。

先遣隊が新天地に到着しその地で繁殖に成功することで倍々ゲーム以上の速度で増加していくことがこの急激な大量発生を引き起こしていると考えられます。

これが成虫になればいずれたくさん発生するか

つまり今回見つかったシンジュキノカワガはその大量発生の先駆けの部隊なのではないかなと思います。

恐らくこのエリアに薄く広がってきていると思いますので今後の分布拡大に注目したいですね。

シンジュキノカワガの幼虫について

今回シンジュキノカワガの幼虫についてサンプルで持ってきました。このサイズは何齢でしょうか?

終齢(左)と3か4齢。

個人的には餌場を離れて蛹化場所を探しているように見えましたので、終齢かなと思っていました。

終齢なら蛹化するかなと思うので試してみたいですね。

ケース内では何か上る場所を用意したら蛹化した。

それ以外にも幼虫について色々と気になる事情があるのです。

まず幼虫であれば毛の剛性や毒の有無は気になりますよね。

それから手に乗せた質感も毒ない種ならば気になります。

シンジュキノカワガの毒性について

シンジュキノカワガは毒が無いとネット上でうわさされています。が、実際に毛に毒があるのかないのかの判別は不明です。

無毒であるという説が一般的なようなので試してみることにします。

触るのはなかなかに勇気がいるか

この毒々しい色合いで触る気にはなかなかなりませんよね。

どれどれ? この白い毛の質感やいかに。

毛は随分としっかりしています。

緊張の瞬間! 大丈夫なようです

そして肌に刺さったりチクリとする気配はありません。話の通りシンジュキノカワガの幼虫に毒は無いようです。

いやはやよかったです。

毛についてですが、幼虫の毛としてはかなり固い印象を受けます。

歯ブラシのふつうぐらいの硬さがある

キアシドクガやモンクロシャチホコ、オビカレハなどに比べれば剛性があり、毛が邪魔で毛虫本体に触れないぐらいしっかりとしています。

これに加えて毛虫は毛に物が触れた瞬間に退却行動や嫌々する行動を取り始めました。

毛虫の毛には寄生バチの接近を感知するなどの話がありますが、外敵への感知としてシンジュキノカワガの毛は良く機能していそうです。

手に乗せてみることに

毒もないことが分かりましたしせっかくの機会ですから手に乗せてみることにしましょう。

結構積極的に乗ってくる。毛に当たらなければスムーズだが毛に触れると嫌がる。

シンジュキノカワガの幼虫の質感はどんな感じでしょうか。

まず手に乗るのは幼虫の中でもスムーズです。

蛹化が土中ではなく幹などの空中であることが影響しているのでしょうか。オオスカシバやセスジスズメのような種類と比べても乗り移りが速いです。

そして秋の終わりということもあってかヒンヤリ質感ですね。質感に大きな差はありませんが、大きさの割に接地面積が少ないように感じます。

移動速度は速く、警戒するとずっと動き回るタイプの様ですね。


ということでケースにおろして蛹化するのかどうかを確かめていきたいと思います。

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