ハンミョウの飼育
ナミハンミョウはキラキラした美しい光沢をもつことからタマムシに負けないぐらいの知名度を持っているように思います。

青、赤、緑と複雑な光沢を持ち、頭部には体に合わないほどの大きな顎を持ち、飛翔はいきなりトップスピードに及ぶ驚異の速さを持つこの虫ですが、捕まえることに関してはタマムシと異なる複合的な要因が関わるため難しかったりします。
そこで今回はナミハンミョウを捕まえて飼育してみた一通りのお話と探す際のコツについて紹介していきます。
ナミハンミョウとは?
ナミハンミョウはオサムシ科の昆虫の1種です。

成虫の体長は約1㎝程度で主に地上を徘徊しているのですが、いわゆるオサムシとは異なり飛翔することが可能となっています。
飛翔は長距離を飛ぶことはあまりなく、飛翔地点から数mを飛んですぐに着陸することが多いです。この様から人に道を教えるミチオシエの愛称を持っています。
成虫は主に5月頃から10月頃まで出現し、比較的自然がある水辺環境と砂地があるような環境で発生します。
肉食性の昆虫であり、大あごで獲物を捕らえてかみ砕きながらムシャムシャと他の昆虫を食べます。
幼虫は乾いた砂地に出現することが知られています。
ナミハンミョウの探し方
ナミハンミョウですが、この虫はいるところにはいるが、いないところにはいない虫と言えます。

そしている所に行ってもタイミング次第ではいない虫です。
はたまたいなさそうなところでも環境条件がそろった場所が近隣にあるといる可能性がある不思議な虫と言えます。
つまりいなかった場所に急に現れたり、いる場所でもいないことがそれなりにあるのです。
ナミハンミョウは時期と環境の二つの要素が大事だと考えています。実はこの虫自体は珍しい虫ではなく、平地でもいるところにはいるのです。

時期は5月から10月頃に見られます。
この内私の観察では5~6月頃の観察機会が多いように思います。今年は6月にハンミョウがいるポイントに足を運んだのでずいぶん目にしました。
ナミハンミョウはおおよそ水辺や滝があるような沢沿いの近くに出現する印象があります。
この虫は幼虫期に砂地に出現するのですが、本種が好むようなむき出しの砂地というのは植生の遷移により消失してしまうという点と洪水などのかく乱により生み出されることが関係しているのかなと感じています。

ナミハンミョウはそうした水辺などが付近に感じられる環境の開けた場所に出てきていることがとても多いため、まずはこれらの要素を含む林道や歩道を見つけるのが大事です。
そうした開けた場所の日当たりのいい所で待機していることが多いため、ちょっと歩いてみると飛びあがって移動する様子が目につきます。
ナミハンミョウの保管と顎に注意
ナミハンミョウですが、大あごを持つため、生きた個体の持ち帰りには注意が必要です。

まず網から取り出すときに噛まれないように気を付けましょう。ハンミョウに噛まれるといてっとビックリするぐらいには挟む力が強いです。
私は噛まれて痛いで済みましたが、場合によっては軽い血が出そうなぐらいな予感はしています。
虫網から移す際にはジップロックや遠沈管を使うことになると思います。

虫かごのような光景が広いものは素早い虫に使うと逃げられるリスクがあるのでお勧めしません。
この際ジップロックではこれを噛んで脱出寸前までいった個体がいるのでなるべく避けた方が良いかと思います。遠沈管が輸送にはベストと言えます。
ナミハンミョウの飼育
ナミハンミョウの飼育についてはクワガタの飼育のものをそのまま移行しています。

ケースは安定のクリアスライダー。全面が透明なケースであり、ケース内で動き回るハンミョウの姿が見えるため、とてもおすすめできます。
ケースも300円台で安く、上部がスライド式になっているため、ピンセットで餌や水飲み場の設置もしやすいのが優れています。
ハンミョウは飛翔までと飛翔速度の両方が非常に早く、目で追うことができない程素早いです。
そのため、ケースを開けすぎると脱走されてしまう恐れがあります。

これを防ぐためにも開封が最小限でスライド式に調整が効くクリアスライダーはお勧めできます。
底材はネット上では砂地にしているものが多いですが、クワガタの針葉樹マット状でも問題なく食事をしています。
繁殖狙いの場合には砂地が必要になりますが、個体をただ飼育するのであれば土の条件にはそこまで厳しくはないようです。
餌と水、飢餓耐性について
ハンミョウの飼育においてはクワガタのように餌が水分を豊富に含まないため、水場を設けて上げた方が良いのではないかなと思います。

同じオサムシのようにゼリーを食べるものはゼリーからも水分が取れるため、繁殖を狙わないことと成虫になって後食のカタツムリを食べていれば3か月は生存しました。
試験的にナミハンミョウをジップロックに隔離してティッシュにゼリーをしみ込ませたものを設置するとこれを舐めている様子が見られました。
ゼリーから水分を取ってくれるのか別で水辺を用意すべきなのかは不明ですが、水分が取れる何かしらの形式は取った方が良いと思います。
私はゼリーで今は試しています。水辺を設置する場合、ありふれた方法ですがペットボトルのキャップに湿らせたティッシュの端などを設置するのがおすすめです。
ゼリーや水場はスライダーの開封口側の直下に置くことでピンセットなどで簡単に脱出を防ぎながら取り換えることができます。

餌については生きた昆虫類を投入する必要があります。
基本的には生きた餌を2日に一回程度与えればよいのではないかなと思います。
現在、秋も終盤なので餌が少なくなってきます。
私はチュウゴクアミガサハゴロモを与えています。

都市部でも取りやすく、外灯や植物などを見れば見つけられます。跳ねる性質がありますが、問題なく捕まえていました。
空腹状態のハンミョウがいる同じケースに2匹のチュウゴクアミガサハゴロモを投入し、1匹は即座に捕食されました。
2匹目はなかなか食べられず、死亡してしまったのですが、死亡した虫も食べるのか気になったのでそのまま入れておくと死後1日後の死骸を食べていました。
ハンミョウの空腹の程度にもよるのかと思いますが、必ずしも生きた虫出なければならないという訳ではないようです。
標本にする個体を絶食させて飢餓耐性を調べたことがあるのですが、この虫はサイズのわりに飢餓に強いようです。
野外採集で4~5日程度は放置しても問題なく生きていました。
ハンミョウを観察する
クリアスライダーの特徴を生かしてナミハンミョウの生態を観察してみましょう。

私的に気が付いた面白い部分を述べます。
まず食事方法なのですが、ハンミョウは大あごとその内側にブラシのような口を持っています。
大あごはいうならばものをかみ砕くためのものであるらしく、器用にかみ砕いて内側のブラシ状のところを通して送っています。

食事を見ると分かりますが、大あごが非常に持てあましているというかおまえ全然顎使ってないじゃんと突っ込みたくなるぐらいには食事の中心は内側の小さいブラシです。
ちなみに捕食時は動いている獲物の姿を目視しているように見えます。
止まっているものへの感度はあまりよくないですが、一度獲物を見つけるとスイッチが入るのか活発に動き回ります。
チュウゴクアミガサハゴロモの例では翅は食べず、頭胸腹を食べました。
ハンミョウは寝るようです。

ケースの中で歩き回ったり飛んだり騒がしいハンミョウも昼間でも寝ているかのように全く動かない時があります。伏せたりはせず足を立てたまま寝ているようです。
行動は昼行性ですが、蛍光灯や明かりがついていると夜間でも構わず動き回ります。
ただ、通常は大人しいですね。確かによく考えるとハンミョウって野外で飛び回る印象が強いですが、それは人が近づいたときなんですよね。
大抵地面で居座っており、近づくことで飛び上がり、また付近に着地するというのを見るにハンミョウ自体は普段はそこまで活発に動き回っていないのではないかなという説が浮かびます。

そんなこんなで飛び回る分管理の手間はありますが、肉食で姿も美しく鑑賞性も高いいい昆虫と言えます。
見つけるのにはちょっと癖がありますが見つけた際には飼育してみてはいかがでしょうか。
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