目につくふわふわの植物
およそ初夏から冬位にかけてきりたんぽの様な大きな帆を付けるどこか風情のある植物を目にする機会がありますよね。

猫じゃらしの愛称でおなじみのこの植物は身近な草地から荒れ地、はたまた山の方へ足を運んでも目にすることがある代表的な雑草です。
しかし、何の仲間なのか?正式名称は何?どうしてたくさん生えている?危険性は?などの多くの疑問が湧いてくるのではないのかなと思います。
そこで今回はこの猫じゃらしをテーマにして身近な植物を知っていきましょう。
エノコログサとは
エノコログサは猫じゃらしの愛称を持つイネ科の草本の一種です。

エノコログサにもいろいろな種類がおり、総称である点に注意が必要です。
およそ初夏から秋ごろにかけてきりたんぽのような特有の可愛らしい穂をつけるのが特徴であり、赤トンボと並んで日本の風景を代表する植物と言えます。

出現環境は主に乾燥した荒れ地や工事の後、草地などに生えていることが多いです。
背丈は50㎝前後とあまり大きくはありませんが、群生する傾向が強いので生息地ではエノコログサがエリアを占有していることは多いです。

花期は夏から秋ごろまでで、種により若干の変化があります。
遅い種類では10月頃にも咲いている種類もありますので、花後の姿を含めると半年以上の長期間もの間かわいい穂を見ることができます。
イネ科草本の特徴
イネ科草本は植物に興味がない方にとってはあまりなじみがないものなのではないかなと思います。

実は植物の中でもイネ科に特有に見られる特徴というのは多く、植物好きには観察してとても楽しいものとなっています。
代表的なものが葉脈です。通常葉脈は網目状に入っている場合が殆どです。

イネ科は葉が細長い場合が多く、葉をよく見ると網目状には脈が走っていません。
ササ舟を作ったことのある方はイネ科の葉が縦に綺麗に割けたことを覚えているはずです。
そう、イネ科の脈は葉の向きと平行に走っているのです。

イネ科草本のこの脈は並行脈と言われます。通常の植物は網状脈です。この点を覚えておくだけでも野外において目の前の植物がイネ科かどうかをかなり判別しやすくなります。
また、花の形状が他の植物と大きく異なるのもイネ科の面白い点です。イネ科草本は花粉症の元になることからも風媒花であることは分かりますよね。
イネ科のお花は芒(のぎ)という小さな花の元(分かりやすいよう表現しています)が集合して一つのふわふわに見える穂を形成しています。
つまり穂には無数の花が集合している訳ですね。
芒はおしべを挟む弁のように機能しており、時期が来ると開きます。爪などで芒をこじ開ければそこからはおしべなどの花の構成要素が顔を出します。

そして何よりもイネ科の草本は種数がめちゃくちゃ多く、苦手な人が多いカテゴリーです。私はイネ科は諦めています。判別点が複雑であり、似た種類ばかりなので非常に頭を悩ませるのです。
陸地の代表種はエノコログサを始め、芝生の芝や、自生の芝と付くオヒシバやメヒシバ、半分水辺に生息する稲(米)をはじめ、湿地環境に生えるイグサの仲間などなど多様性にかなり富みます。
これもイネ科の魅力の一つと言えるかもしれません。
エノコログサとバッタ類
エノコログサですがイネ科の草本というだけあってバッタ類を始めとした昆虫類がよく利用しています。

私的な観察ではエノコログサは都市部でも荒れ地や河川敷、ちょっと放棄された空間があると入ってくる印象があり、身近な環境で目にするマダラバッタやオンブバッタなどの小型種のバッタが利用しているイメージがあります。
また、穂についてはカメムシ類が利用するというのがイネ科の定番です。

イネカメムシを始めホソカメムシ、ヘリカメムシ、種名は不明ですが丸っこいカメムシ類、カスミカメの仲間などたくさんのカメムシが見られます。
お米は栄養たっぷりですよね。米ほどではないにしろヒエやアワなども雑穀として昔は食べられていました。
虫たちにとっても優れた栄養であると思われるため、カメムシ類が穂にはよく来ています。カメムシファンはイネ科を探してみましょう。

また、葉についてはバッタ類が利用していますね。エノコログサ自体がイネ科を始め色々な草の生えた場所に出現するため、エノコログサを食べていましたとは言い切れませんが、エノコログサを含む草地にバッタが見られることは多いです。
ショウリョウバッタやトノサマバッタなども見つかる場合がありますが、環境的には前述の小型種の方がより狭い草地でも見つかる分目にしやすい印象ですね。
エノコログサはマダニに注意
晩夏や秋の風物詩ともいえるエノコログサですが、近年山地だけではなく平地や都市部でも草地にマダニが見つかりやすくなっているため注意する必要があります。

マダニはエノコログサにつくんですか?と聞かれれば可能性はありますとしか答えられません。
ただしイネ科草本というのは山地におけるマダニに注意しなければならない植物の代表種(クマザサ)であり、イネ科の葉先にはマダニが潜んでいるというのはよく認識されているものです。
エノコログサは草丈が50㎝以上程度有り、先端が穂になっています。
マダニが取り付きやすい形状となっています。

加えて都市部でもその辺で目にしますからアライグマを始めネコなど哺乳動物と接する可能性は高いです。
マダニ自体は草全般に取り付いているので常に気を付ける必要がありますが、気を引き締めるためにもエノコログサのような背丈の高い草を見つけた時にはマダニに気を付けましょう。
ちなみにマダニは色々な形で取り付いています。落ち葉にいる事もありますし、茎にもいますし、葉の上やウラにもいます。もちろん穂のような取りつきやすいような場所にもいます。
0.2秒でも接すれば服や動物の毛に取り付いてきますので細心の注意を払っていきましょう。
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