とげとげの白い花、それはワルナスビ
トゲ植物や花が大きくて目立つ植物は注目を集めがちです。

雑草であれば草刈りの時に痛い、道端にあれば花が大きくて目につく。さらにこの花はバナナのようなものまでぶら下げていることからちょっとユニークです。
今回は身近で目にするそんなワルナスビを紹介していきます。
ワルナスビとは?
ワルナスビはナス科の外来種の植物の1種です。

日当たりのよい草地から日陰的な草地まで広くに出現し、盛夏から秋の終わりごろまで荒れ地から草地にみられます。
名前の通り非常に厄介な植物であり、トゲの硬さ、トマトのような見慣れた実、背の低い草本で見つけにくい、根茎から再生する、ナス科草本の土中環境単一化(連作障害)などの要素を引き起こします。
花は初夏から秋にかけて見られ、白い綺麗なお花の中心にバナナのようなおしべが見られます。なかなかにユニークな姿をしています。
実は小型のトマトという感じで、ナス科らしいですね。
トゲが非常に強力な草本
ワルナスビにはとても強烈な棘が多数生えています。

樹木や低木でトゲを持つものはそれなりにいますが、草で強烈な棘を持つ物はあまり多くない印象があります。
樹木ではハリギリやタラノキが代表的な棘植物で、サンショウや、メギ、ナワシログミなど種にもよりますが強烈な棘を持つ者はいます。

草本の厄介なところはその見つけにくさにあります。樹木はそこにあることが明確なため、視認するのは簡単です。
ワルナスビはその辺の草の中に潜んでいることがあり、引っかけるととても痛い場合があります。
ワルナスビがいる場所で草刈りをしてみれば、その凶悪さが分かるでしょう、刈り取って横たわっているだけでも厄介なものです。ましてや除去の時にも棘が邪魔で痛いです。
更にたちが悪いのは葉にも棘があるという点です。

フユザンショウのように葉にトゲがあるものは確かにありますが、身近にあり、トマトみたいな葉や一見綺麗な花があるからと触れようものならとげが刺さります。悪いなすびです。
毒性のあるトマトのような実
ワルナスビはトマトの小さな実のようなものを付けます。
これはナス科の植物にある程度共通してみられる特徴なので仕方がないのですが、多くのナス科植物には毒がある場合があります。
代表的なものを上げると同時期に見られるアメリカイヌホオズキがいますね。

黒いトマトのような実には毒性があります。
赤い実のヒヨドリジョウゴは在来種の植物ですが毒があります。

ワルナスビの実にはソラニンというジャガイモの芽に含まれる成分と同等の強烈なものが含まれていることが報告されています。(国立県境研究所侵入データーベース)
棘による外敵の捕食、有毒成分による阻害などなど非常に強力ですね。
根茎から再生するのも侵入データベースで指摘されている懸念事項です。
ワルナスビは侵入場所にて群生しているケースが多いのですが、これは地下茎による増殖戦略が功を成していると言えます。
例えばイモカタバミのように根茎を中心に増加していく植物や、根があればそこから再生するスギナは別名ジゴクソウの通称を持つしぶとい植物の代表格です。

根茎で増えるワルナスビにもこの傾向が見られると考えられ、同データベースでは1㎝の断片からも再生できるとの驚異的な再生力が伺えます。
侵入した場所にずっと見られ、数を増やし続ける背景にはそのような生存戦略があるわけですね。
トゲ植物が無限に増え続ける、スギナよりも強烈に思えます。

そしてワルナスビは外来種であるため、畑地に使う土や飼料などに混じって土地に入ってくる王道のルートを突き進んでいます。
ナス科であるワルナスビは前述の増加戦略により群生しやすいのですが、単一の植物で構成される群落には致命的な欠陥があります。
それが加害生物も単一化するということです。

よく連作障害というのが農作物で上がりますよね。これは土壌中の病原菌やセンチュウを始めナス科を例に挙げるとナス科を主に加害する病原菌や生き物が集まってくるために引き続き同じナス科を植えると被害が出るというものです。
畑地にワルナスビが存在し続けるとこで土中が意図せぬまま連作障害に近い状態になる可能性は十分に考えられ、ワルナスビが優先した土壌ではナス科植物の生育が妨げられるような被害もあり得るのです。
こう考えるととても厄介な植物ですよね。除去しにくく増殖しやすい、植えたままにしておくと畑地などに影響があるかもしれないと。
そんなワルナスビですが、花は結構かわいいんですよ。

なんといっても中心のバナナ(笑)ここまでバナナがふさわしいパーツもなかなかありません。
愛嬌はあるけれども実態は凶悪な外来種のワルナスビはその名前も含めて印象に残りやすい外来種の植物です。身近にも生えていると思うので探してみてください。
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