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ツツジとサツキの違いとは?おしべの数?葉の形?ツツジの交配事情などの面白さを紹介

ツツジとサツキをめぐる話題

ツツジとサツキは3月から5月末ごろまでを彩る花として大変人気が高く、各地でツツジ祭りが開催されるなどサクラに負けない人気を誇る有数の植物であると言えますよね。

サツキの一種。雄しべは5本ある。

ツツジとサツキは非常に似ていますが、咲く時期が違ったり、webなどでは様々な違いが考察されていますが、実際にどうなのかという点については根拠などなく疑問が残ります。

そこで今回はツツジとサツキの違いという永遠のテーマについて考えていきましょう。

ツツジとサツキのよく見る違い

webにてツツジとサツキの違いを調べてみると、その違いについてはいろいろな説を目にすることができます。

クルメツツジの仲間たち。サツキの仲間との違いはなにか?

例えばおしべの数がツツジは5本以上、サツキは5本であるというものや、毛の多さが違う、花期が違う、葉の色の濃さが違うなどなどそれこそ色々なものを見ることができます。

確かにツツジやサツキの仲間は原種となる種類を基にして、それこそツツジ×サツキツツジ×ツツジツツジ×シャクナゲというように色々なものを掛け合わせていって多数の品種ができています。

サツキだけでも2000種類以上はあると言われているのですから驚きですよね。

そんな中で実際にツツジとサツキが違うのか私としても気になったので調べてみることにしました。

ツツジやサツキの分類的には?

ツツジとサツキはどちらもツツジ科ツツジ属の植物です。

品種、クレノユキ。クルメツツジの仲間。

これは花の形が違うもののツツジの名を持っているドウダンツツジが、ツツジ科ドウダンツツジ属となっていることからもそもそもツツジとサツキが似ていることが分かります。

ドウダンツツジ属のドウダンツツジ

そもそも「サツキ」や「クルメツツジ」や「キリシマツツジ」という呼び名ですら品種改良により生まれている種群の総称です。

個人的にはサツキという種名と「サツキ」という種群の混同があるのではないかと推測しますね。

何を言っているのか分かりにくいですよね。

花びらの奥が白い底白という模様のサツキ

webでも見られる論文として「日本の伝統的園芸植物としてのツツジの歴史について」(大出.2008)というものがあり、その中でツツジの分類的な話の詳細を見ることができます。

この中で無数に分かれる枝の中で、サツキ類はツツジ属ツツジ亜属ヤマツツジ亜節サツキ列に分類されています。

非常に細分化されたものであり、属が同じであれば交雑種が生まれるとされていますので、ツツジ類の品種が多いのも納得がいきますよね。

ここにはサツキマルバサツキの2種類があり、この2種類は原種としてクルメ系を始め色々なツツジの品種を作り出すために使用されてきたものと言われています。

オレンジ色が鮮やかなクルメツツジ。

この園芸種を生み出すために利用されてきた原種のサツキとマルバサツキには面白い違いがあります。


それについて面白い記述があり、「「サツキ」の江戸時代からの品種(古花)は、「花は紅色、雄蕊は5本、葉が細長い」サツキを起源とする系統と、「花は紫色、雄蕊が10本、葉が丸い」マルバサツキを起源とする系統、および「それらの中間型」の系統に分けられる」(大出 57p)というものがあります。

つまりサツキの交配種にはおしべが5本のもの、10本のものが原種として有り、その交雑の結果中間を示す、つまりおしべが6~9のものもいる可能性が示唆されている訳です。

分布域についても記述があり「サツキは福井、長野、神奈川から西に分布、マルバサツキは九州南端の開聞岳を北限に、種子島、屋久島、中之島などの島々に分布する。」とあります。

サツキの雄しべを見かけた品種ごとに注目することはないが、5本のものは多い

サツキは一般的におしべが5本と言われていますが、必ずしもそうでないことも知られており、サツキの中には5本以上のおしべを持つ物も出現しています。

これは恐らくツツジ類の品種を生み出す過程の中で、サツキに由来するものとマルバサツキに由来するもの、もしくはかけ合わせる個体ごとの遺伝子にマルバサツキの遺伝子などが入り混むことで、園芸品種のものの中でもおしべの数が異なるものが生まれることが推測できます。

これを支えるものとして(大出2008)の中で「サツキとマルバサツキの分布が重なる屋久島では、両種の自然交雑個体と思われる中間型の個体や、突然変異体が見られることが知られている。」とあります。

二重咲きになるサツキ。品種改良の賜物といえそうなもの。

これについて明確におしべが5本以上であるなどの記述はありませんが、雄蕊が5本と10本のもので中間型や突然変異が起こるならば、おしべの数が5~10本の間のサツキもあると見て取れるのではないかと思います。

サツキもマルバサツキも多くのツツジの品種改良の際に使われた種類と聞いていますので、持ち出されて各所で園芸目的で活用されていたならばサツキにも5本以上の物があるのは納得がいきますよね。

となるとサツキが5本のおしべを持つことが通説となっているのはなぜなのでしょうか?

サツキの品種の一つ。サツキには赤系統のものが非常に多いように感じる。

これは私的な推測となりますが、入手のしやすさやはサツキが本州にもある分ダントツであり、しかもサツキは赤をベースとするので、品種の希少性や価値を生み出しやすかったため、サツキの血統が強く世に出回っているなどが思い浮かびますね。

根拠はありませんが、よく言われる5本である。と言える程度にはおしべの数が5本なサツキは確かに身の回りに多いのです。

マルバサツキは島の植物であるために、なかなか使えなかったのでしょうか。それとも遺伝的にサツキが強いのでしょうか。このへんは謎です。

今回の話をベースにすればもっとサツキの品種にはおしべがあってもおかしくはなさそうなものなのですが。

5本が多い一方で、サツキの写真を調べると5本以上のものも見つけられる。

サツキはクルメやキリシマなどのツツジと違い市場の一般に出回る種類が少ないこと(オオサカズキなど身近な種類がだいたい決まっている)などももしかしたら要因かもしれません。町中にあるサツキは私の近辺や行動圏ではほとんどがオオサカヅキです。

サツキのルーツ

実はこの論文で私も知見をかなり深めさせていただいたのですが、江戸時代にツツジが人気を集めたのはよく知られていますよね。

ツツジの交配事情とは?

江戸時代に多数の品種が生まれ、江戸キリシマという有名なものが生まれた話もありますよね。ツツジの交雑は昔から人気だったわけです。

この中でこうして生まれた園芸ツツジについて「全ての品種群が、九州から屋久島に自生していた自然交雑実生から「選抜した個体」が関与している。」(大出2008)というのが印象的でした。

ツツジ類が自生していることはよく知られており、主に西日本や九州での自生の話はよく聞きますよね。

それこそミヤマキリシマとヤマツツジ、サタツツジが一つの山において標高により分布が分かれており、その山の中域帯で交雑個体が生まれたというのは有名な話です。

キリシマ系ツツジと自然交配していたのはヤマツツジ。オレンジ系のツツジ。

そう、ツツジの交雑は自然下でも普通に起きているんですよね。

ただ、サツキにおいても同様にサツキやマルバサツキの自然交雑から選ばれていたというのは驚きでした。

ネットなどではクルメやキリシマの交雑のものばかりで、そうしたサツキの交雑に関する根拠を見たことが無かったためです。

マルバサツキの交雑個体が混じっているならば、おしべが複数あるサツキや、後の世代で突然にそうしたイレギュラーが発現してもおかしくないわけです。

マルバサツキの系統が入っていると雄しべの本数に変化があるのだろうか?

マルバサツキのルーツは限られたエリアになってしまいますが、そのエリアでも種間交雑をしていたならば、その苗を基に系統が分かれてきたものやその系統と掛け合わせた品種も数多く存在しそうですよね。

ならばサツキにおいてもツツジと同様おしべは5本以上とするのが良いのではないかと個人的には思うものです。

雄蕊にこだわりすぎない方がよいのではないか

webあるあるですが、検索上位の者に右習えで情報ソースもよく分からずにこれはこうですとしてしまう機会は多いと思います。

ミツバツツジの中では5本のミツバツツジと10本のトウゴクやシロバナトウゴク、キヨスミなどが知られる。

別に調べたものが正しいとは限らないので一つの説としてとらえればよいのですが、ツツジとサツキにおいてはおしべが明確な違いと説明されすぎており、逆に間違いが生まれているように感じます。

ツツジにも例えばミツバツツジは5本のおしべがありますし、クルメ系でも例としてハナアソビでは5本キリシマ系のホンキリシマでも5本のおしべがあります。

もちろん雄しべが5本のツツジも見つかる

雄蕊に関してはツツジは5本以上サツキは5本が先行しすぎて、こうした5本のおしべがあるツツジがサツキだと間違われてしまう部分もありますので、園芸品種で複雑なツツジ事情を考えるとあまり気にしない方がいいのかもしれません。

あくまでおしべは傾向が見られるという部分であり、個人的には名前の由来となるサツキの時期に咲く(5月は皐月、6月)からサツキ。くらいのやんわりした違いを見ていけばよいのではないかと思いますね。

シャクナゲとの交配種とかもあるので一概に言えないのではないだろうか

同じツツジ科ツツジ属でそれ以下の分類も似たものが多く、世に出回るのはそれらが複合的に掛け合わされたものの可能性が高いわけです。
個人的に面白いと思うのは桜もソメイヨシノや、ヤマザクラ、オオシマザクラなどの種があるものの、桜は桜と呼んでいますよね。

サクラ属内の話なんて全く聞かないのに、ツツジ属内の話はよく聞く。指標がある分一種の知的マウントなのではないかと個人的には思うが。

皆バラ科サクラ属の植物であり、その属内の違いとかは気にしないのに、同じようなツツジ科ツツジ属の属内の違いは気にするというのは面白いなと思いますね。

ソメイヨシノがおしべ30前後、ヤマザクラが35前後みたいなことは気にしないでしょうに。


同じ品種名の「ツツジ」の仲間であり、その「ツツジ」にたくさんのツツジ属が絡んでいるのでなかなか断言するのは難しいのではないかと思います。

特定の傾向を読み解こうとするには、専門家が行う解析や遺伝子分析の領域に頼らないと難しいのではないかと思いますね。

一方で品種の「サツキ」と種名のサツキツツジ(ツツジ科ツツジ属)が混同されているケースもあるのかもしれません。ツツジという名のツツジは有りませんが、サツキという名のサツキ(サツキツツジ)はあるんですよね。

つまり世にいうツツジとサツキの違いとは品種群(クルメやキリシマ、ヒラド)と種名のサツキを比べている可能性もあるのかなと思いましたね。

その場合には俗に言うツツジでは雄しべが5本以上、サツキツツジは雄しべが5本という説明で通ります。(マルバサツキを除けば)

花が先のツツジ、葉と同時のサツキ?

これも違います。

ツツジは一般的には花が先行し、葉はあとに出るが、必ずしもその通りではない。

確かにツツジは花が先に咲く傾向はあり、およそ花後に芽が出てきますが、ツツジにおいても葉が先行するケースを見ています。

これについては検証中であり、個人的には土中の窒素が過剰の場合に起きるのではないかと考えています。

例として化成肥料を大量に撒いているヒラドとバーク堆肥で肥料成分が貧弱そうな場所では前者が花よりも先に新芽を出し、後者は花終わりまで新芽は出ていませんでした。

ヒラドツツジにおいて花と葉が同時に咲いているもの。

これはあくまで仮説なのですが、同じ条件ではクルメ、キリシマ、リュウキュウなども先行して花より先に芽を出していることから何か要因があるようです。

話がそれましたが、花か新芽どちらが先行するかも環境条件により変わるため、あくまで一つの指標として機能すると考えた方がいいかと思います。

サツキは基本緑の葉ありきで、花が先行するケースは見ていない。

個人的にはやはり時期はうそをつかないのではないかと思いますね。

前述のように分類学で見てもかなり細分化された違いであるため、こうだというのは難しいのではないかと思います。

あくまで個人的な意見なので参考程度にしてください。何が言いたいかというとツツジは面白いということです。

本記事は下記の関連と文献の紹介で終わりますが、カブクワ採集の圧倒的な情報量や今回のような考察系、身近な自然で気になるものを更新していますので、興味があればカテゴリーや他の記事も見てみてください。

ツツジ管理関連道具

剪定する場合に最もおすすめするハサミがこれです。切断力がダントツによく、ヒラドなどの太い枝でも切れます。私も愛用しています。花の後には有機肥料の油かすの中でもリン酸の割合が高いものを上げるのがおすすめです。花つきにリンが影響を与えると言われるためです。施肥するならおすすめで、よく使います。ハダニやルリチュウレンジ、グンバイにお悩みの場合におすすめする浸透移行性の薬剤です。効果抜群で、愛用中。

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致命的な害虫としてはこの記事中のベニモンアオリンガが挙げられます。
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葉を食べるものとしてはルリチュウレンジハバチもいます。成虫は針を持たず、幼虫はイモムシの姿をしています。
引用文献 大出英子 日本の伝統的園芸植物としてのツツジ類の歴史について  目白大学短期大学部紀要 2008,1 p49.57
参考文献 大出英子 日本の伝統的園芸植物としてのツツジ類の歴史について  目白大学短期大学部紀要 2008. https://mejiro.repo.nii.ac.jp/records/576
 (2025.5.10)