白いタンポポみたいなお花
春から夏頃にかけて様々な場所で目につくのが背の高い白っぽいタンポポです。

群生していることも多いこの植物は外来種のキク科植物、ハルジオンやヒメジョオンです。
身近で目にする2種類の植物についてみていきましょう。
ハルジオンとヒメジョオンとは
ハルジオンやヒメジョオンはキク科の植物です。

色味は白っぽいものからピンクっぽいものまでさまざま見られ、空き地から林縁まで都市部の広い自然環境で目にすることができます。
花は2種類のものからなり、1つが花の中央部を構成する筒状花(とうじょうか)、もう一つが花の周りにある舌状花(ぜつじょうか)です。
およそ3月頃から開花が見られ遅いものでは秋口位まで咲いているものもあります。

非常に開花期が長く、キク科の綿毛による種子散布戦略と相まって広いエリアで見られるのも納得がいく植物です。
この2種には他植物の生育を抑制するアレロパシーの機能を持つことも指摘されており、群落の形成とも関りがあるものと思われます。
主に初夏頃において花を訪れる多くの昆虫類が訪れており、蜜源としても機能しているものと考えられます。
ハルジオンヒメジョオンとタンポポの違い
ハルジオンとヒメジョオンをタンポポと比較すると実際には大きく異なります。


しかしなんとなくキク科植物のイメージを持っているとこのお花は白いタンポポみたいな花と映るはずです。違いを見ていきましょう。
まず花ですが、タンポポは黄色い舌状花からのみ花が作られています。

花弁は紙を狭く長く切ったベロを出している姿をしています。
一方でハルジオンヒメジョオンの色は基本的に白色からピンク色の間ぐらいの色合いをしており、花は中心が筒状花、外周が舌状花となっています。

中央と外周で色も異なるのが分かりやすい見分けポイントですね。
黄色一色では無いので色も見分けやすいポイントになります。
葉もかなり違います。

タンポポの花はおでんのコンニャクを串に複数刺したときのような三角形の連続となりますが、ハルジオンヒメジョオンの葉はヘラのような形をしています。

また、地面にべたりと這うようにして葉を広げ、その中心から花茎を出していくのがタンポポなのですが、ハルジオンとヒメジョオンは葉の中心から茎を出し、大きく立ち上がって分枝し、その先に花を付けます。

例外を除いてハルジオンとヒメジョオンは立ち上がってくるのは見分けポイントとして使えます。

このように、花、葉、茎などなどの各ポイントを見ていくことでややこしい2種類も確実に見分けることができますね。
ハルジオンとヒメジョオンの違い
トピックとして一応ハルジオンとヒメジョオンの違いも紹介しておきます。


2種は葉が茎を抱くようにつくか(ハルジオン)、普通につくか(ヒメジョオン)という点と茎の中身がスカスカ(ハルジオン)か詰まっているか(ヒメジョオン)という有名な見分け方があります。
一応外来種の植物ですが、判別のために茎を折るのは可愛そうなので、葉で見分けるのがおすすめですね。

ポイントを写真で比較しておきましょう。葉が茎を抱くハルジオンと抱かないヒメジョオン。これだけでもわかりやすいですよね。
外来種としての2種
ハルジオンとヒメジョオンの外来種の特性的な部分はあまり見つかりません。

国立環境研究所の侵入生物データベースではハルジオンにアレロパシーの作用があることが指摘されています。
アレロパシーというのは他植物の生育を阻害する効果を持つ成分を根から土中に放出することで、他植物の生育を阻害し、日光や土中の栄養分を独占できるというような利点が大きい戦略の一つです。
ハルジオン、ヒメジョオンが群生している場面によく出くわすのに貢献している可能性が考えられますね。
また、同データベースの中で窒素分に富む場所を好むと言われています。

例えば花壇や畑地などこの植物を見かける機会が多い場所には堆肥の漉き込みや施肥などが行われる機会が多いような気がします。あくまで気がする程度の話ですが、そういう傾向はあるようです。
体感としてはこの植物の出現は風散布による地形的な効果の影響が強いように思われます。

例えばコンクリから土に変化する場所が代表例ですが、風に煽られて飛んできた種が土に代わる場所に堆積して群生しているように思えるケースはよく見ます。
斜面の下部なんかも見かける機会が多い場所ですが、降りてきた風に種子が乗ってきたのではと考えられます。
やはり外来キク科の繁殖力は眼を見張るものがありますね。
2種類の花の意外な違い
ここからはタンポポとの比較の意味を込めて訪花昆虫の視点から見てみましょう。

「文系学生のための生物学教材の改良、Ⅳ被子植物の蜜標、その2蜜標の疑似紫外線カラー画像」という研究の中では一部のキク科植物に紫外線を照射したときの色合いの具合を見ることができます。
この研究の中では舌状花のみのものと舌状花と筒状花を持つ物の例が見られます。


そのまま当てはまるとは言えないのですが、舌状花と筒状花を持ちその色でUVの濃淡を作ることで訪花性昆虫へ蜜のありかを示し、受粉に優位に立つということが考えられますよね。
実際のところ数える程度のキク科の中の例でも舌状花で先端がUVを反射するもの、舌状花全体が反射するもの、舌状花は反射し筒状花は吸収するもの、花序全体が吸収するものなど我々の眼に見えないところでは多様性が見られます。

昆虫はUVを反射し、吸収する部分(ネクターガイドと言われる)で濃淡を出すことで花の中で蜜源を探しているというのはよくイメージされるものですが、この研究の中では反射だけでなく吸収することでもアピールしているのではないかという考察が成されています。
その例としてハルジオンが挙げられており、ハルジオンはなんと花序全体がUVを吸収すると指摘されています。

多くのこの記事を読んでいる人が察する通り、ハルジオンは昆虫が良く訪れているお花で、ハナバチ類、カミキリモドキ類、チョウ類、甲虫類などなど様々な虫がやってきます。
昆虫はアゲハチョウの吸蜜実験でよく知られるように色を記憶する能力があることが分かっています。

アゲハチョウ例とすると色紙と共に蜜を上げるとアゲハチョウはその色を選択するようになるというものですが、春のツツジなど赤や紫色のものに誘引されることと関りがあるものです。
つまり私見としてもUVを吸収しないことそれ自体が何かしらネクターガイドのように機能しているという説には納得です。

ちなみにタンポポで身近なセイヨウタンポポは舌状花の先端がUVを反射し、中心部が吸収することで疑似的に色の濃淡が作られているようです。
訪花昆虫へのアピールという点でもタンポポとハルジオンたちには違いがあるんですね。
身近なお花関連記事
pljbnature.com
町中でも目にするオレンジ色のお花は外来種の植物です。アレロパシーや汁に毒があったり、種子数が多かったりと強さの秘訣を紹介。
pljbnature.com
植え込みなどで目にするトリカブトみたいな葉をつける植物の紹介です。
pljbnature.com
タンポポに近い仲間を知りたい場合にはおすすめです。黄色で舌状花のみをつけたタンポポっぽい植物をまとめて紹介します。
pljbnature.com
初夏の白いお花が気になるならおすすめです。
参考文献
山岡景行「文系学生のための生物学教材の改良、Ⅳ被子植物の蜜標、その2蜜標の疑似紫外線カラー画像」,2009,2025.4.23,https://toyo.repo.nii.ac.jp/records/2565