地面をくねくね動く奇妙な生き物
シャクトリムシといえば奇妙な動きで知られるシャクガなどの蛾の幼虫ですよね。

うんしょよいしょというような声が聞こえてきそうな可愛らしい動きをするシャクトリムシなのですが、山地の方に行くと同じような動きをする嫌な生き物がいます。
そう、知る人は知っているヤマビルです。
ヤマビルを知らない人の中には彼らをシャクトリムシだと勘違いしている人もいるようなので、ヤマビルとシャクトリムシの違いを理解して安全にアウトドアを楽しみましょう。
ヤマビルとは
ヤマビルは主に動物が生息する環境の湿った地面に出現するヒルド科の生き物の一種です。

体長は3~4㎝程度で体色は茶色をしており、頭部とお尻に吸着する能力を持つ吸盤のようなものがあります。
出現期間はおよそ3月から10月程度で、山地の湿った地面上や沢沿い、獣道沿いなどに多数見られます。
ヤマビルの移動方法はシャクトリムシの姿そのもので、体をΩのように伸縮させながら吸血対象となる哺乳動物に足元から近づきます。

ヤマビルには二酸化炭素を感知する機能と振動などを感知する機能、そして体温を感知することができると言われており、これは実際にヤマビルが好む環境で息を吹きかけてみたり、ヤマビルに手を近づけてみたり足踏みをしてみたりすると寄ってくることからも分かります。
哺乳動物に取り付いたヤマビルはその口器を利用して皮膚を割き、ヒルジンという血液を固まらなくする成分を注入して、麻痺させ、吸血します。

恐ろしい生き物ですが、都市部では見られないため、その存在を知らない人が初めてヒルのいる環境に行くと大抵知らずに襲われて恐怖することになります。
存在を知らない人からは地面を歩くシャクトリムシの名で語られ、あれがヤマビルなんですか!?と驚かれます。
移動速度は活性時の夏頃では1分で大人の腰から腕位まで登れます。
シャクトリムシとは
シャクトリムシは主にシャクガ科の蛾の幼虫のことを指します。

Ωの記号のように足を縮めて伸ばして移動するのが特徴的で、シャクガの仲間が幅広い環境に出現するため、身近な様々な環境で目にする機会があるお馴染みの幼虫です。
幼虫と言えども昆虫の仲間であるため、頭部とお尻側に体を支える脚があるという特徴があることと、幼虫は植物の葉を食べるために頭部に顔らしい顔があるのがヤマビルとの違いと言えます。

シャクトリムシは日頃植物の葉を利用しているため、基本的には樹上にいます。
時折風などに煽られて落下した個体や、落下途中に糸を出してバンジージャンプしている個体に遭遇することがあります。
色は様々で、緑色のものを見かけることが多いですが、擬態のためか灰色のものを見ることも多いです。

成虫はマンションの壁などでもおなじみのこんな姿をしており、成虫がいるのだから幼虫もいるよねと分かりやすい蛾の仲間ですね。
この仲間には毒が無く、吸血などもしないので基本的には安心できる幼虫です。

触れてみると質感がなかなか心地よくて、おすすめです。
ヤマビルとシャクトリムシの違い
ヤマビルとシャクトリムシはカテゴリーが全然違うのですが、生き物になじみがない方からすると動き方が同じなので似た生き物であると勘違いされるようです。

基本的にヤマビルは都市部の街中で見つかることはありません。(関東の話)
なのでお家がたくさん立っている環境に住んでいる方は、Ω状に動く生き物を見つけたならばシャクトリムシと考えて構いません。

ヤマビルの生態は動物に依存しているので動物の分布しているところに出現することになります。
特にシカやイノシシの移動と共に見つかることが多いので、雑木林程度のレベルでも見つかることはありません。

ヤマビルは地面にいることを理解しましょう。山地であっても地面がカラカラに乾燥しているとヤマビルはいません。
つまり落ち葉が堆積したりして湿度が逃げないような状況になっている場所ではヤマビルを警戒する必要があります。


シャクトリムシは地面にいることはあまり多くはありません。


また、植物の葉を食べているため、積極的に人に向かってくることもありません。
逆にヤマビルは吸血対象として人に近寄ってきているため、ヒル密度の高い場所では足元の至る所からヒルが迫ってくることがあります。
こうした行動の違いを覚えておくのも見分けには有効です。
ヤマビルは環形動物、シャクトリムシは昆虫のカテゴリーに分類されます。
環形動物は身近なものでいうとミミズが該当し、足などを持たない生き物です。


つまりじっくりと観察してみるとヤマビルにはその体に足が無く、シャクトリムシには足があるという特徴があります。
とはいえヤマビルを目にしてそんな細部を見ている余裕はないのではないかなと思います。
大きな違いとして初心者に向けては色を覚えてしまうのが分かりやすくて確実です、

シャクトリムシはシャクガの仲間の総称なので様々な色があります。一方でヤマビルは種名なのでヤマビルの特徴はどの地域でも共通しています。
ヤマビルは茶色っぽい色をしており、背中に黒い線が数本は知っています。
触れてみれば意外と質感は悪くないのですが、足が無いからか頭部とお尻の吸盤で吸いつかれている感じが強く、吸血されるのもあってあまりいい気はしません。
こんな分かりやすい生き物なのですが、足元にいると全く分からないんですよね。
登られても吸血されても分からない時があります。なので茶色のシャクトリムシを地面に見かけた時には十分注意しましょう。
木から落ちてくるのはシャクトリムシ
ヤマビルは環形動物であるため、湿度をかなり好みます。
砂場の土にミミズがいないのと同じ理由です。シャクトリムシは基本的に樹上にいることが多く、木の幹などで見つかることもありますね。
ヤマビルは殆ど地面にいますのでその違いは大きいです。
時折ヒルが上から降ってきたと言われますが、その説は否定されています。
一方でヤマビルが1mぐらいの幹に設置していた樹名板から出てきたことがあるので、登ったのか、首元から移ったりしたのかは不明ですが、多少の低木程度なら昇る可能性は否定できなさそうです。

多いパターンとしてはカバンなどの荷物を地面に置いてしまいそこから上半身に来るケースだと思います。
荷物は置いたときに振動が生まれますし体温が残っていますので暖かいです。

ヤマビルが昇るのには十分な条件を満たすので、無機物とはいえ取り付いてくるのです。そしていきなり上半身に湧いたように見えるのでヒルが木から落ちてきたと勘違いされたのではないかと思います。
私はヤマビルが多いエリアにて活動していますが、ヒルが頭上から来たというのはいまだに経験していません。
今のところ迷信ではないかと思っていますね。
うっかりヒルと遭遇したら
ヤマビルとシャクトリムシの違いはなんとなく分かりましたか?

ここでは一応ヤマビルに知らずの内に遭遇してしまったときの対処を紹介します。
ヤマビル密度が高い場合、それはもうヤマビルファイターなどの事前対策をするしかありませんが、時折付かれる程度の密度ならば対策はあります。
まずは靴下の中に長ズボンを入れてしまうですね。

ズボンの下に入られないようにすることで目視できる時間が増えるので吸血のリスクが減ります。
靴の中に入ってしまう場合も多々ありますが、足元は靴を脱げば簡単に確認できますよね。
見つけたヤマビルですが、ヒルの吸盤は強いのでなかなか剥がれません。

が、吸血していないならば無理やりにでも引っ張って大丈夫です。
私は活性が低い時期や個体数が少ない時には乗ってきたヒルを寒風摩擦の要領でめちゃくちゃに手で転がしてしまいます。
どういうわけか意外と効いて、投げ捨てられます。

普通に投げるとヒルは手から離れませんので、緊急時に困ったら試してみてください。ヒルに触れるという前提込みですが。
基本的には山地に行く前にヤマビルがいるのかどうか調べるような癖を付けておきたいですね。
肩に乗ったりするのはシャクトリムシの方が可能性が高いと思います。これは別に手に載せて下ろせば問題ありませんし、嫌でしたらペットボトルでも木の棒でもなんでも利用して下ろせば解決です。
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