よくいる毛虫の名前と特徴
春から初夏の厄介な虫としては毛虫が挙げられます。

葉などからぶら下がり、気が付いたら服やカバンの上にいるそれは虫好きでもうおッと驚いてしまいますし、虫嫌いな人からすると悲鳴を上げてしまいますよね。
そんなよく目にする毛虫たちと種類が分かっていればなんとなく安心できませんか?
そこで今回は春から初夏頃にかけて目にすることが多い毛虫をピックアップして紹介します。見たことあるあの毛虫たちが盛りだくさんですよ。
毛虫の毛の機能
種類の前に毛虫のトピックが楽しくなる情報を紹介します。
毛虫と聞くとまず毒を持つと思い浮かびませんか?実はそれこそ毛虫が自然界で生き延びるために取っている戦略の一つなんです。

毛虫の中で実際に毒を持つ種類というのはかなり限られており、たった数パーセント程度(具体的な割合は不明)しかいません。
こうした毒を持つ生き物の姿を真似ることで、毛虫は間接的に天敵となる生き物などに襲われにくくする生存戦略なのです。
擬態には有名な二つのものがあり、これは毛虫でどちらとも見ることができます。


面白いので説明しておくと、毒の無いものが毒のあるものの姿を真似るベイツ型擬態と、毒のある者たちが似た姿をすることでその色への危険性を高めるミュラー型擬態です。
例としてオビカレハのように水色やオレンジ色など派手な色をすることはそうした派手な色を持つ毒毛虫の姿を真似ていると考えられます。


また、ドクガの仲間が仲間同士で似た色を持つことやスズメバチやアシナガバチなどが同じように黄色と黒の色でまとまっているのがミュラー型擬態です。
その色への警戒を高める効果があると考えられます。
キアシドクガ
キアシドクガはドクガ科の昆虫の1種で、およそ4月の中旬ごろから5月の終盤頃にかけて発生します。

重要なこととしてキアシドクガには毒がありませんので、たかられても安心してください。(毒は無いが、不安がないこととは別)
利用する樹種はミズキ科の植物で、ミズキやクマノミズキが主に狙われます。

この2種の植物は雑木林のメジャーな4種に含まれるため、本数も多いことから大量発生を引き起こすことがあります。
幼虫は黒色をしていますが、料理に載せて豪華さを出す金粉のような微妙な金色が散りばめられており、これにより種の特定は簡単な部類です。
基本的に幼虫はミズキ科についているのですが、葉を食べつくしたりすると次の木を求めて大移動を行います。

その際にはレスキュー隊員のように葉からぶら下がり、風に煽られて移動するなど、下手なホラー映画よりも恐ろしいシーンに遭遇します。
実体験として近隣エリアで発生したキアシドクガの大発生を見に行ったのですが、凄まじいものでした。
スパイ映画のように釣り下がるキアシドクガを避けねばならず、止めていた車には数十匹レベルで黒い毛虫がまとわりついていました。

周囲を自転車で走る登校中の高校生たちからは悲鳴が上がり、阿鼻叫喚の環境となっていました。
成虫は白い姿をしており、足が黄色くなっています。これがキアシドクガの由来となっています。
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マイマイガ
マイマイガはドクガ科の昆虫の1種です。

赤色の青色の少しメタリックな色合いをしているのが特徴であり、最大7㎝近くにもなる大型の幼虫です。
ドクガ科の幼虫ですが、孵化直後の一例幼虫にのみ毒があることが知られており、写真のように触れても問題はありません。

マイマイガは食草が非常に広いことが知られており、その利用樹種は100種類を超えることが知られています。
王道のコナラなどのブナ科も利用できると思われ、身近な雑木林でも発生します。
7㎝近い終齢幼虫ともなると体のトゲも大きくなり、刺さるようになります。

この棘には毒はありませんが、普通に針状で痛く、時折マイマイガに触れて棘が刺さった子供を見ることになります。
その際にはサイズ感がヒントとなりますね。また、終齢には背中にかけて赤色の点と青色の点が規則正しく並ぶという特徴があります。
終齢幼虫はそれまでと大きく色合いなどが違うのですが、特徴がはっきりしているので事前に知っておくことで安心できるでしょう。
子供用の番組、ニャッキのモデルとしても知られています。

成虫はこれまた問題児で、大発生することで知られています。
北海道を始めとする自然豊かな環境では外灯にこの虫が大量に集まり、産卵するため、該当が卵で埋もれてしまうなどの問題と死骸で車がスリップするなどの事故につながるケースもあります。

外灯のLED化が進むいったんなのではないかと個人的に考えています。
幼虫も成虫も結構かわいい部類です。
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オビカレハ
オビカレハはカレハガ科の昆虫の1種です。

毒を持つ蛾の代表格であるカレハガの仲間の中で、毒を持たないという面白い特徴があります。
利用樹種は桜であり、ソメイヨシノで発生するためおよそ5月頃にかけて目にする機会は多いです。

最大の特徴としては色が挙げられ、オビカレハは明るいオレンジ色と水色が目立つ幼虫です。
頭部とお尻の方には黒色の点が見られ、類似種がいない幼虫として初心者でも見分けは簡単です。

この蛾も大量発生することで知られており、木の上で葉などに巣をまとめて集団で過ごすという特徴があります。
写真がありませんが、サクラの木の上でそんな蜘蛛の巣の大規模のようなものを見かけたら疑ってみてください。
幼虫には毒は無いため、このように触れても問題はありません。

毛は前述のキアシドクガやマイマイガと比べてもかなり柔らかく、体はヒンヤリとしていてなかなかに癒される幼虫です。
初心者でも触りやすい毛虫として推薦しておきます。
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カシワマイマイ
カシワマイマイはドクガ科の昆虫の1種です。

ドクガ科なのですが、毒は無いとされています。しかしちょっと毒がありそうな見た目すぎて私は触れていません。
カシワマイマイは写真の都合上大型時のもののみですが、個体数はそこまで多くは無い印象です。
しかし5月から6月頃にかけて雑木林などに足を運ぶとそれなりに見つける機会はあり、その白っぽい色合いと頭部とお尻から出る放射状のいかにも危なそうな見た目から一見しただけで強烈に印象に残ります。
体長は終齢のもので5~6㎝程度、名のカシワの通りブナ科の樹木に発生するため、身近な雑木林でも見つかります。
フクラスズメ
フクラスズメはヤガ科の昆虫の1種で、幼虫はオレンジ色と緑色、それに黒を合わせたような非常に毒々しい色合いをしています。

体長は非常に大きく、6~7㎝近い大きさになります。
利用樹種はカラムシという草本で、日当たりのいい草地や斜面によく生えることからそうした環境に大量に出現します。
出現はおよそ初夏から6月頃と晩夏から秋ごろに集中的に見られ、食草のカラムシが丸裸にされていることからよく分かります。

食草がなくなると大移動を開始し、地面などに大量に見つかります。
フクラスズメは幼虫の気性が非常に荒いことで知られています。これは実際に触れあってみると明らかで、子供だと恐怖する程です。
まず特徴的なものが足で茎を掴んで頭部をメトロノームのように振る行動です。

葉が振動することで他のフクラスズメも頭を振り始め、周囲に伝染し、カラムシ一帯が揺れることもあります。
続いてがゲロを撒き散らかすです。最悪です。
頭を振りながら周囲に緑色のゲロを撒き散らかします。素手で触ろうものなら手が緑まみれになります。
そして極めつけが掴んだ時のヘッドバンキングです。子供のトラウマになりかねません。

この毛虫は毒は無いので触れると知って掴むとかなり強いパワーで頭部を振りかざして指を殴ってきます。
恐る恐る触る子が泣く位ビックリする行動で、大人でもうおッとビビるくらいのスピードと威力があります。
そして指にはゲロ。もう最悪です。

しかしその色合いや凶暴性は唯一無二であり、見かけると棒などで戯れてしまう不思議な魅力がある幼虫です。
成虫はフクラスズメの名の通りモフモフとしてぬいぐるみのような癒される蛾で、後翅にキシタバの仲間のような紫色のキラキラした模様があるのが特徴です。
かなり美しく、人気に慣れるポテンシャルがあると思いますね。
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クマケムシの仲間
クマケムシの仲間はヒトリガ科の昆虫です。(写真が取れたら掲載)

5月頃に雑木林を散歩していると非常に素早く動いているこの幼虫に出会うことがあります。
この仲間は毛虫の中でも特に移動スピードが速いという特徴があります。
毒は無いのですが、毛量が多くなかなか触るのに勇気が必要となります。ちなみになぜかチャンスがなく触れていません。
ドクガの仲間
ドクガの仲間はドクガ科の昆虫の1種です。

今回の記事中で唯一毒のある毛虫となります。
幼虫には多くの種においてオレンジ色と黒色の模様があり、これにより危険な生き物であることを訴えています。
前述の通りミュラー擬態であり、種は不明ですが、このように別種であっても似た色を持つことでドクガの仲間内で危険性を共有しているものと考えられます。

メカニズムとしては鳥が食べる→痛い思いをする→その色を避けると考えられますね。ちょうど大人が嫌いなものを発見するようなプロセスと似ています。
ドクガの仲間は毒を持ちながら種数がそこそこ多いので、色々な樹木で出現するため厄介です。
身近な雑木林からちょっとした下草などについていることも多く、屋外に置ける昆虫による刺傷例はそれなりに多いものと思われます。

特に上から降ってくることがある点が厄介で、屋外で活動している場合にはうっかり触れる可能性があることを考えておくのがベストです。
出現期間と回数も多く、種によっては年中発生するものもいます。

成虫は非常に特徴的な姿をしており、身近では黄色で頭部に毛が密集しているテント型のものが多いです。
ドクガの仲間は成虫にも毒があるので、振れないよう注意を払う必要があります。
毒は熱で無効化できるとされますが、屋外の被害ではなかなか都合よく除去できないので、セロハンテープなどを所持しておくと安心して剥がせます。
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モンクロシャチホコ
モンクロシャチホコはシャチホコガの昆虫の1種です。

出現期がやや遅く8月から9月となりますが、身近な毛虫として紹介しないわけにはいきませんので紹介します。
モンクロシャチホコは桜に発生する毛虫の一種であり、幼虫は若い時には赤色っぽい色合いをしています。終齢になると黒っぽい色合いとなり。大きさは5㎝前後位になります。

終齢幼虫になると蛹になる場所を求めて徘徊する行動を取るため、大量発生すると黒い幼虫がたくさん徘徊する光景を見ることができます。
モンクロシャチホコには毒は無く、触れても問題ありません。
この毛虫は毛が短く、前述のキアシドクガやオビカレハなどと比べても癒される感はありません。

しかしこの毛虫は美味しい毛虫であることが知られており、私も機会があれば食べたいと思っています。
サクラを食べていることから桜餅のような香りが楽しめるんだそうで、昆虫食の中でも指折りのおいしさだそうです。

モンクロシャチホコは発生していれば大量に遭遇できるのですが、薬剤などが撒かれることも多い都市部では意外と遭遇することができません。
この虫がいる時は桜の成分であるクマリンというものが赤色になるため、サクラの木の下が赤色に染まるという特徴が見られます。
モンクロシャチホコを食べたい皆様においては夏場にそうしたサインを探していくと見つけやすくなるかと思います。
シャチホコガの仲間ですが、シャチホコのようなポーズを取ることはあまりなく、反っても大したことが無いです。シャチホコとはいったい。
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