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道端で目にするオレンジの丸いお花の正体は? 群生するナガミヒナゲシと生存戦略

道端で目立つオレンジ色の花

春から初夏にかけてお散歩などをしていると目につくのがオレンジ色のマルっぽいお花です。

近年目にすることが増えた明るいオレンジ色のお花

あらゆるところで目にするなんとなくポピー感のあるこの植物の正体は外来種のナガミヒナゲシという植物です。

この目立つお花は外来種の生存戦略を知るうえでなかなかに役立つ植物です。

今回は道端のあのオレンジのお花を例にあまり知らない植物の世界を紹介します。

ナガミヒナゲシとは

ナガミヒナゲシは主に春から初夏頃にかけて空き地やちょっとした草地で目にするケシ科の植物です。

オレンジ色の非常に目立つ花びらをつける

大抵複数の個体もしくは群落を形成しており、地際に広げた葉から長い花茎を伸ばし、その先端にオレンジ色のお花を1つ付けます。

季節が進むとロケット鉛筆のような特有な種子を作り、これも非常に目立ちます。

ナガミヒナゲシの種。開花後も非常に目立つ姿をしている。

馴染みのあまりないケシ科の植物ですが、この植物の中には栽培が禁止されているようなものもあり、これは一部の種類において成分中にアヘンとなる成分が含まれているためです。

ナガミヒナゲシにはアヘンのもととなる成分は含まれていませんが、もしピンクのナガミヒナゲシのようなものを見つけた場合には注意が必要です。

ナガミヒナゲシは1年草の植物です。種子から発芽して1年でライフサイクルが終わる植物のことを指しますが、種子の結実が多いこの植物は一度侵入すると付近を占領する傾向が多々見られます。

植物中には植物毒であるアルカロイドを含み、素手で触れるとかぶれるなどの症状が引き起こされる可能性があるため、個体数が多く除去も大変という厄介な植物です。

ナガミヒナゲシが群生する理由

ナガミヒナゲシの花期には同じ種類が群生している様子が多々見られます。

ここは数株でしたが、独占するように群生していることが多いです

違和感を覚えるぐらい群生するこの植物は、アレロパシーと言われる他の植物が忌避する成分を土中に分泌することで、他の植物の生育を阻害し自分たちだけが生き抜く環境を作り上げているのです。

ナガミヒナゲシはその種子数が非常に多いことで知られています。一説ではその数は1つの花で1600ともいわれているようです。

3cm程度のこの果実から1500近い種が出る

種子の形状は草食動物のフンをものすごく小型にしたような形をしており、冬などに実を付けるナス科植物、タマサンゴが実をころころさせて種を散布するように傾きや風、水を利用してコンクリートなどの隙間などの都市部の自然環境下にある他植物が利用できないニッチをうまく利用しているように思えます。

そうした環境に入り込んだナガミヒナゲシはそこからさらに種子を広げて自分の陣地を広げていくのです。

そして先に入り込んだ彼らは根を伸ばし土が堆積したとしてもアレロパシーで後から来た植物たちの生育を阻害し、群生しています。

非常に強力な戦略です。

類似戦略のセイタカアワダチソウ

自然界において特に日本に入ってきている外来種の中には、同じようなアレロパシーの戦略を取るものがいます。

主に秋口から初冬にかけて見つかる黄色い植物のセイタカアワダチソウです。

この植物はナガミヒナゲシと同様の戦略を取り、私見ではナガミヒナゲシよりもより強力という印象です。

セイタカアワダチソウの場合には、自分のアレロパシーで最終的に自分が枯れてしまうというのですから驚きです。

通常セイタカアワダチソウはススキなどの群落と同時に見つかるもしくは入ってくるのですが、ススキに止められることもあればススキを侵略することもあります。

ススキは唯一勝てている植物という感じですが、ほとんどの植物においては負けてしまう場合が多く、河川敷や荒れ地で大群落を形成しています。

こうした話を聞くと背丈の高いナガミヒナゲシだという風に感じられませんか?一応違いを述べるとナガミヒナゲシがケシ科、セイタカアワダチソウがキク科という違いがあり、前者は重力散布と水散布後者は風散布という違いがあります。

拮抗するセイタカアワダチソウとススキ

散布においてはどちらにもメリットがありますが、やはりキク科はタンポポの散布と同様強力です。

外来種で目立つ植物はアレロパシーもしくは早期に侵入していち早く群落を形成するパイオニア植物のような戦略を取るものが多いのでそうした視点で観察してみると面白いですよ。

毒も持つ有毒植物

ナガミヒナゲシは前述のようにその種子散布戦略や群落の形成によってものすごい数見つかります。

成分は植物の汁に含まれるので茎などに触れる程度では問題ない

これに加えて厄介なのがこの植物の汁には有毒成分であるアルカロイドが含まれており、かぶれたりするリスクがあるというところです。

かぶれの程度と事実に関しては通説として言われている部分なのですが、多くの医療サイトや県のHPにて記述がみられるのでかぶれるリスクがあると考えてもいいでしょう。駆除にはゴム手袋などを利用した方がいいです。

ナガミヒナゲシの除去を効果的に

ナガミヒナゲシですが、結実前の除去が最も効果的です。最初の花が確認できる4月の前半位の時期であれば群落にまだ結実した個体はありません。

3月中ぐらいには出現する。花の時期に除去するのが最も確実。

その時期に根こそぎ除去してしまえばこの植物は地下茎などから生えてくるタイプの植物ではないので除去することができます。

しかし一度入り込んだ場所には埋土種子と言って地表に出てきていないものの発芽する能力を持つ種が埋まっていることも多いので継続的に新しい種が入り込まないよう駆除していくのが効果的です。

一方で結実後の除去は危険です。果実を破裂させずに除去できれば問題はありませんが、数が多いこの植物の群落においてそれは難しいでしょう。

この姿が見え始めたら除去作業は危険。

外来植物の駆除でよく言われることですが、結実後の種の取りこぼしが更に翌年のその種の拡大につながってしまう可能性があります。

また、放置して結実させて自然にこぼさせるよりは全然いいのですが、もし駆除を検討しているならば結実前のタイミングに行うのがおすすめです。

ポピーと似ているナガミヒナゲシ

ナガミヒナゲシですが、ポピーと間違えている方も多いのではありませんか?

園芸で人気が高いポピー。あの花も4枚の花びらを持つ。

それもそのはずでこの2種は同じケシ科の植物なのです。

可愛らしいポピーというなとは裏腹に色々問題があるケシ科というのはちょっとギャップがありますよね。

ポピーの写真はどこかで取れたら掲載しますが、非常に似ています。

例としてシソ科のツクバキンモンソウ(左)とジュウニヒトエ(右)

お花というのは共通の特徴を持つ物を同じカテゴリーとして分けているので、類似種に同様の特徴が見られることが多いのです。

ナガミヒナゲシとポピーは共にケシ科ケシ属。これがどれぐらい似ているかという話をすると人気昆虫のノコギリクワガタというのがいますよね。

ノコギリクワガタよりもさらに人気なものとしてミヤマクワガタがおりこの2種は初心者には同じに見えるかもしれませんが、昆虫をやる人からすれば全然違います。

おなじみのノコギリクワガタ。ポピーの例のように同じ属には似たものがいる。

これはノコギリはノコギリクワガタ属、ミヤマはミヤマクワガタ属のため形態的に違うと分かります。どちらもクワガタムシ科の昆虫であることから科レベルで同じでも属に振り分けると異なるのが分かりますよね。

一方で同じノコギリクワガタ属には離島のアマミノコギリやハチジョウノコギリがいます。写真は無いのですが、これらは非常に似ています。

属が同じということはそれだけ似ているのです。

ナガミヒナゲシとポピーは同じケシ科のケシ属ということで勘違いしてしまう人が多いのも納得ということですね。ナガミヒナゲシはこうしたいろいろな外来種の戦略を知るうえで便りなお花です。目にしたら観察してみてください。
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