行楽シーズンに緑の変な幼虫
およそ夏から秋ごろにかけて太く短いトゲだらけの幼虫を見つけることがあるはずです。

いかにも危険そうな雰囲気を感知しつつ様子を見て調べてみればやはり危なそうです。
この寸胴な幼虫はイラガの仲間で、電気虫の通称で知られる最も痛いとされる幼虫の1種です。
今回は偶然出会った外来種、ヒロヘリアオイラガを紹介し、他の毛虫と異なるその姿を紹介します。
イラガとは
イラガはイラガ科に所属する昆虫で日本にいる全ての種類の幼虫に毒がある昆虫です。

出現はおよそ初夏から秋口に集中しており、広食性の種類が多いのも特徴です。
幼虫には多くの毛虫が持つ毒針毛とイラガ科に特有の毒棘というトゲがあります。
毒針毛と毒棘を持つのはイラガ科の特権であり、他の幼虫では見られない特徴です。
毛は見えにくいですがトゲは分かりやすいため、短く棘のある幼虫を見つけたら警戒しましょう。
写真のものは外来種のヒロヘリアオイラガで近年身近な生け垣などでも目にする機会が増えました。まとまって生息する傾向があるので注意しましょう。
毒針毛と毒棘を持つ外来イラガ
イラガの仲間は毒棘を持つというのはよく知られています。私もユニークな特徴として認知していました。

しかしながらヒロヘリアオイラガの研究を見るとどうやら少なくとも外来のヒロヘリアオイラガには終齢幼虫になると毒針毛があるようです。
沖縄県におけるヒロヘリアオイラガによる刺傷被害とその背景という研究の中でその写真の中で終齢幼虫の脱皮柄にある毒針毛が紹介されていました。
これにより強力な毒棘だけでなく、風などで抜け、衣類などで被害を及ぼす毒針毛も持つというかなりユニークな生態があることが分かりました。
在来にはそうした性質は無いようです。これも姿は似ているものの外来種に由来する特異な性質ということでしょうかね。
体系に注目
イラガの仲間はとにかく太いです。

マックのポテトとモスバーガーのポテトくらい太さが違います。
逆に長さは成虫が比較的大きいのに対してかなり小さいです。
ヒロヘリアオイラガを見分けるポイント
イラガの仲間で外来種に似たものはいます。

しかし終齢幼虫のヒロヘリアオイラガは分かりやすいポイントがあります。それが頭部のオレンジ色の模様です。
在来で姿かたちが似ているものとしてはアオイラガやクロシタアオイラガがいます。
しかしながら見分ける確実なポイントがありますので覚えておきましょう。
近年ヒロヘリアオイラガは身近な公園や植樹されている樹木でも目にする機会が増えました。
まとまって出現するなどよく見られる傾向こそありますが、最終的には判別ポイントを持って判断するのがおすすめです。
本記事では比較対象の写真が無いため、今後撮影出来たら行います。
外来イラガの天敵?
ヒロヘリアオイラガの幼虫を見つけたのは午前中でした。

午後に棒で突いたり、撫でてみた反応を調べておこうと再度見に行くと、2匹いた幼虫の内1匹がいなくなっていました。
しかしよく見るといるのですが色が変色していました。樹皮に溶け込むようにして潜んでいたのがヨコヅナサシガメです。
実は先ほどの沖縄の研究にてヒロヘリアオイラガの嗜好性について述べられており、その中では桜の利用率が極めて高いという記述がありました。

サクラといえば同じ外来種であるヨコヅナサシガメが好んで利用する樹種です。
ヨコヅナサシガメは成虫越冬を行い初夏頃から成虫が出現します。
その時期は在来種の様々な幼虫が出現しており、正確なものは不明ですが、エノキではオオムラサキを始めとする在来種、サクラではオビカレハなどの在来種、クヌギなどでもマイマイガなどの在来種への捕食を見たことがあります。
ヨコヅナサシガメ密度にも左右されるとは思いますが、個体数の大きな地域では同じく大発生するヒロヘリアオイラガを餌資源として活用しているような場面があるのかもしれません。

結局今回見つけた2個体はヨコヅナサシガメにより捕食されてしまいました。外来種が侵入してくることで外来種が外来種を捕食するというビックリな状況も生まれているのですね。
今回は外来イラガを紹介しました。残念ながら身近で最もよく見かける種類へとなりつつあるヒロヘリアオイラガ。
群れてうっかり事故にもなりやすい恐ろしい対象として今後も勢力を広げていきそうです。
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参考文献
沖縄県におけるヒロヘリアオイラガによる刺傷被害とその背景 比嘉ヨシ子 岸本高男