タンポポの大きさがずいぶん違う
春に散策していると目に入るのがタンポポですよね。

外来種と在来種で話題となるタンポポですが、それ以外にも背丈が個体によって大きく異なるという違いが見られます。
これには何か戦略があるのではないかということで考察していこうと思います。
タンポポの生存戦略?背丈の違い
通常よく目にするタンポポというのは葉は地面にべたりと張り付き、そこの中央から花茎を伸ばしておよそ10~15㎝程度で花を付けています。

タンポポが所属するキク科の植物の中にはブタナやコウゾリナといったように一見大型のタンポポのように見える種類もいますが、その花茎がブタナでは50㎝前後程度あることからも花茎を伸ばすことにはメリットがあると考えられます。
キク科の植物はその多くが虫媒花(ちゅうばいか)といって花粉の運搬を昆虫に頼っています。
受粉後はお馴染みの綿毛の姿へと変化していくのですが、その後の種は風により散布されます。
つまりタンポポを始めとするキク科の植物が花茎を高く伸ばしているのには、種子散布の効率を見た時により種を遠くに飛ばせるからという可能性が考えられます。

一方で荒れ地や散策路のタンポポを見れば分かるように、種の侵入はランダムとなりいい条件に恵まれるとも限りません。
中には人通りが激しく踏まれて折れてしまうケースも良く見つかります。
そう種子散布を効率的にするために花を高くすることは折れてしまったり踏んでしまうことと表裏一体なのです。
ここで小さいタンポポに注目してみるとべたりと広げた葉はいつも通りなのですが、花茎をほとんど伸ばしていないことが分かります。

これは種子散布上は確かにやや不利に思えるかもしれませんが、昆虫の訪花にはそこまで影響がないように思われます。
昆虫は花に反射する紫外線による濃淡の差などを感知して花を探しています。なので日当たりがあれば受粉には問題がありません。
なので背丈の違いは受粉以外の部分に働いているのではないかと考えられるのですが、恐らく茎を無くすことで人ごみの踏圧の中でも生存できる形質へと適応しているのではないでしょうか。


植物も様々なサイズの花茎を出すことでその場所で適したサイズへと変化しようとしている可能性が考えられますね。
例えば雑草を始め植物は剪定位置によって、芽の伸び具合が変わるという特徴があります。
外来種ですが5月頃に目立つオオキンケイギクを例にとると、地際で刈り取ることで翌年以降蓄えた栄養を糧に旺盛に出てくるという性質があります。

クヌギやコナラの萌芽更新なども地際で刈ることで旺盛な新芽を出しますよね。逆に草刈りでは地際から駆らず、草の途中から切ることで生育をマイルドにすることができます。

これは弱く剪定することで新芽の成長に回される養分が少なくなるためです。
このように植物は生育している環境や条件に合わせてその地に適した形へなじんでいく性質が見られます。

そのため、踏圧が高い環境下で何度も花茎が折られてタンポポが短い花茎を出して生存した可能性が高いのではないでしょうか。
地面に張り付いたような植物というのは周りにも実は多く、最たる例がキランソウです。
葉も花も完全に地面に張り付いたこのお花は立ち上がる植物と比べると目につきませんが、踏圧に対して強いので実はかなり身近に普通に生えています。
身近なオオバコも踏圧に強いだけでなく、種子に粘着成分を持つことでむしろ踏んだ人間の足を利用しているという強さがあります。
そう考えると背の低いタンポポは今まさに人間が多い環境に適応しようとしているのかもしれません。
背の高いタンポポも低いタンポポも必要かもしれない
背が高い、低いどちらがいいのかというのはケースバイケースであることがよく分かりましたよね。

ここではそうした多様性が必要であるかもしれないという話をします。
植物の背丈に対する学術的な根拠は見つけられないのですが、他の生き物ではそうした大小の違いというのはその種の生存に有利であることが考えられています。
例えばジャンルが全く異なるクワガタ。

クワガタには大サイズのものから小サイズのものがいます。
採取的な視点でいうと大サイズがかなり人気なのですが、それは自然界の食物連鎖的な視点で見ても同様で、姿が大きい分見つかりやすく捕食を受けやすいことが指摘されています。
つまり小さい体のクワガタがいることで捕食を避けてクワガタという種の生存が絶えないよう貢献している可能性があります。

多少形質が異なることにはこうした利点が確認されているので、タンポポというカテゴリーの中に花茎が長い、短い、無いというような変化があることは自然界で生きていくうえで明確には不明ですが、何か有利な点があるのでしょう。
こうした適応力は高いほど開発などに強いです。

身近で身られるタンポポはその多くがいまでは外来種なのですが、彼らはクローンで繁殖ができるため、そうして得られた強い形質の個体を増殖して環境に適応することができます。
だからこそ外来タンポポはここまで身近で当たり前に在来種と入れ替わったのかもしれませんね。
ちなみに他の説としては単に栄養が少ないなどが考えられます。それは面白くないので言及する程度にします。