目にするマナーの何故を解説
カブクワ採集を行っているとそのマナーについて目にする機会が増えますよね。

マナーの理解は絶対に必要ですが、○○してはいけないというような注意書きこそあってもそれがどういう結果につながるのかというのは読み取れない場合が多いかと思います。
既に採集している人、初心者、ともに限らず性善説的な部分も強いですが、カブクワの持続的な出現を期待するならばやはり理解する必要があるのかなと感じます。
この記事では一般的に言われるマナーを破るとカブクワ採集にどんな影響があるのかを紹介します。
皆様もよく目にする行為が何につながるかぜひ理解して採集を楽しみましょう。
樹皮をめくれを剥がさない
マナーとして非常によく目にするものです。

実際都市部を始め採集者が集まる場所ではかなりひどいものが見られます。
樹皮をめくってはいけない理由としてはポイントが二つあり、一つがクワガタの隠れ家を壊す行為であること、もう一つが樹液が乾燥してしまうので利用できる樹液が減るということです。 どちらもその場所のクワガタの出現が減る可能性があります

クワガタの中でもコクワやヒラタクワガタなどの平べったいクワガタは非常に憶病な性格をしているため、こうしためくれの裏を生息場所にしていることが多いです。
これを破壊せず、クワガタをとる知恵比べを行うのが掻き出し棒を使った採集であり、カブクワ採集の醍醐味の一つです。
確かにそのめくれや樹皮の隙間を破壊すればあなたはクワガタが取れるかもしれませんが、本来カブクワの住処にお邪魔させてもらっている立場のものが、彼らの住処を破壊してはいけません。
誰しもお家に来た人に家が破壊されたらいやですよね?

その住処を破壊しなければそのシーズン中他の人がまたクワガタを取ることができますし、あなたが取ったコクワではなく、より珍しいヒラタが来るかもしれません。何よりあなた自身がそのポイントでクワガタを取り続けられるのに破壊してしまうのはもったいないです。
クワガタたちもそこを住みかとして使い続け、長期的に見れば破壊しない方が+なのです。
そのように自分だけ取れればいいという人はカブクワ採集はすべきではありません。

あくまで我々は生き物が生息している場所にお邪魔しているだけなのですから、入ったときと出る時にはなるべく同じ状態を維持することが望ましいです。
続いてこうした樹皮の裏や隙間には樹液が湧いています。

裏に湧いている樹液は樹液の持つ水分でめくれ裏の空中湿度を保つことで、乾燥せずに流れ続けます。このめくれが破壊されると、乾いた空気にさらされることになり、隠れ家であり餌場として機能していたポイントが消えることになります。
人の出入りが多いエリアでそうしためくれ裏にある樹液ポイントが破壊されるとともに乾いていくのはいくつも目にしました。
それは長期的に見れば自らクワガタが来るポイントを破壊しているのと同じことです。
採集者が採集ポイントを破壊するのは愚の骨頂なのでやめましょう。
木を削らない
樹液を出す目的で木を削る方がいますが、木を傷つけても樹液が出る場合は少ないのでやめましょう。

樹液は木の内部にある栄養を運ぶ組織が傷つくことで流れます。
国産メープルシロップであるイタヤカエデの樹液採集風景などを見れば分かりますが、親指程の管を深く差し込んでおり、人の手では到底届きません。
樹皮を削った程度では樹液は出せないばかりか、あなたが削る場所は辺材部と言って植物の生きた組織ですので植物が弱ります。

そもそもカブクワは流出した樹液に含まれる糖分が酵母菌などにより発酵することでやってきます。
仮に木を傷つけて樹液を流したとしても、その樹液にはカブクワは来ませんし、樹液の効果により浅い傷はすぐにふさがってしまいます。
ではなぜカブクワの来る樹液は出るのかというと、カミキリムシやキクイムシのような木に穴をあける虫が木の深い所まで穴を空けてふさがりきらない穴を空けるからです。

これにより樹液が長期間外部まで流れ、酵母菌が樹液について発酵することでカブクワが来るようになります。
なので木を傷つけても意味はないのです。仮に木を傷つけているならば、それは私は樹液が流れるメカニズムもカブクワが樹液に来る理由も知らない無知ですと周りにアピールしているようなものです。
知っている人は凄い目で見てますよ。
罠を仕掛けない
バナナトラップを始めとするトラップはその使用が許可されている場所で、回収するならば使用しても良いかとは思います。

ですが個人的な意見としては、バナナトラップを利用して採集してもカブクワの採集に関する知識は手に入りませんので、トラップを使用せずに樹液採集を行うことを推奨します。
例えばバナナトラップでお酒や酢などを投入しますが、それはなぜでしょうか?
これは前述のトピックで伝えた樹液の発酵の中にアルコールや酢酸が含まれるためです。

カブクワはアルコールの香りを探知して樹液にやってくるのですが、こういうような生態的な理解はバナナトラップでは理解できません。
さらにそうした目的を理解しない手段を利用していくと、手段を問わずカブクワを取ることが目的化してしまい、取れれば何をしてもいい、自分が取れればいいという考えになると個人的に考えています。

バナナトラップ自体がそうした自然のメカニズムを理解せずにカブクワを取る手段だからです。
結果、自然の繋がりを軽んじてしまい、トラップの回収が面倒臭い、や、カブクワ以外にも樹液のアルコールにやってくる虫が入る可能性があるなどの想像力がなくなり、放置されたトラップの中で虫たちが大量に死亡するということに繋がります。

そうしたカブクワだけが取れればいいという人たちが増えると、樹皮めくりを始めとする目先の利益だけを求めた、今回の記事の仮想敵となる行動を取る人々につながるのです。

なので私はカブクワ採集を自然の中で行うならば、それを行うものとして樹液やそれを取り巻く生き物などのメカニズムを理解する必要があると考えています。
そうすれば自然の中にお邪魔するという感覚が自然と湧いてきます。
なお、それを理解した上で手段としてトラップをやる人はとてもいいと思います。
持ち帰るのは飼育できる数
やたらと大量に捕獲している人がいます。

もちろん捕獲だけして数を数えてリリースしているというパターンも多いのですが、中には見つけた個体はすべて俺のものだという人もいます。
あくまで個人的な感覚ですが、自然が少なくなっている現在においてそのような大量捕獲を自慢しているのは凄いのではなく、持続可能な資源の扱い方も分からない自分だけ楽しめればいいというまさに前述のトピックに共通している人たちの姿そのものです。

同じエリアでたくさん捕まえて飼育したいような、大きな個体や愛着がある個体などを選抜して持ち帰れば、自然資源であるカブクワたちも多くが離されることになるので、長い間多くの人が楽しめるものではないかと思います。
資源は昔と違い昆虫に限りませんが、減っている可能性が高いです。

虫が好きでなくとも虫を扱う行為をしているのですから、未来の人たちも同じ楽しみができるよう努力をするのが今の採集活動には必要だと思います。
挨拶をしよう
これも個人的な部分ですが、挨拶をしていくのは大事だと思います。

これは採集の現場で遭遇するお互いにおいてもそうですし、地域にお邪魔しているならばそこで生活している方への挨拶、高尾のようなケーブルカーを始めとするその場で働いている方々などへの挨拶をする意識は、大げさかもしれませんが、そうした虫を取る活動をしている人のイメージに貢献する活動であると思います。
個人的な体感としては心地いい方が多いですが、中にはこりゃ問題になるわと思わざるを得ないような人もいます。

現地にて多いケースではありませんが、そうした挨拶をすることで地元の方やそこの組織の方とコミュニケーションが始まり、その地にいる人が網を持つ人などにどのような印象を持っているかといったような話に展開したことがあります。
そうしたその地で生きている方の意見は非常に重要で、悪い印象が広がればそれは個人から地域に広がり、採集は禁止すべきという話へと広がってしまうでしょう。

昆虫界隈ではそうしたトラブル的な話から自治体が採集禁止に発展してしまう事例もあります。
これも前述と同様に我々は自然の資源を扱わせていただいているという視点を持ち、採集地をただお目当ての虫がいる地としてみるのではなく、その場所で育まれてきた自然の一部に足を踏み入れるというような意識を持つ必要はあると思います。
お目当ての虫がいる地ではなく、お目当ての虫が育つ地なのです。
木の根元は掘ったら戻す
隠れているクワガタを掘り起こすために木の根元にある落ち葉や土を掘り返してそのままにしている場合がよく見られます。

これは足元の隠れ家が利用できなくなることと、木々の根が乾燥してしまいやすくなる可能性があるため、掘ったら戻しましょう。
入ってくるときと出ていく時はなるべく同じように努力する必要があります。

カブクワは落ち葉の堆積した地面に潜っていることが多いので探す手段としてはとてもいい手段です。
しかし、それを戻さないのは同じ場所で探そうとする他の人やそこを住みかとするカブクワへの配慮が足りていない行動ですよね。
掘った場所を戻してあげれば一気に次の人にもカブクワにも優しい行動となります。やりっぱなしにはしないようにしましょう。
写真などの背景に気を付ける
町中を始めカブクワを取れてうれしい気持ちが先行すると、いい写真を撮ってSNSやブログなどに上げたくなります。

気持ちは非常にわかるのですが、背景には注意しましょう。
採集者は背景にある山や公園の人工物、道路や人工物、木の種類など様々な視点からあなたが採集した場所の情報を探りに来ます。

そうした業者のようなものは今回の記事中で述べた自然などどうでもよく、売りものになる個体が取れればいいという考えのものです。
嬉しくて上げた情報がその場所を荒らしたり、採取禁止へ導く重大なステップにつながる可能性があります。

夜で暗いからと言っても安心はしないでください。加工アプリで色調をいじれば簡単に暗闇の背景はばれます。
近年ではあらゆるところから業者が情報を狙っていますので扱いには細心の注意を払ってください。
当ブログや他の採集ブログにて具体的な地名(河川や高尾などを除く)が上がってこないのは、こうしたマナーの無い人を自分のポイントに呼び寄せないためです。
捕まえたカブクワは逃がさない
飼育したけど飽きちゃった。夏の終わりだし逃がしてあげようね。

という中には善意から来る行動のように見えるものもありますが、これもやめましょう。
犬や猫を飼って途中で飽きたから逃がすなんてことはありませんよね。

捕まえて持ち帰ったからにはその個体が死ぬまでお世話をしてあげる必要があります。
それができないならば厳しいですが生き物は育てるべきではありません。
やや難しい話としては捕まえた場所と別の場所で話すのは生物多様性が重要視される現代においてはよい行動ではありません。
例えばA町で捕まえたクワガタをB市で放してしまうと、地域ごとに異なる可能性がある遺伝子の汚染につながります。

日本人と中国人が同じアジア人として似ているものであってもその違いがあるように、彼らにも違いがあるのです。
遺伝子のかく乱は一度起こると取り戻すことができないのでとても重要です。

何よりもそういう意識をもって最後まで世話をしてあげるという心構えが生き物を通じて学べるので、ばれなければ何をしてもいいというような隠れた悪事をしなくなる心につながると信じています。
とマナーの話になるとちょっと難しい面もあったり私情が出てきてしまう面もありますが、昆虫も生物資源であるので海産物などと同様に後の世代が昆虫採集をしたいと思ったときにその相手を探せるような、後世の楽しみを奪いつくさないような行動をしていくべきだと考えています。
性善説的な面も強いマナーですが、採集をする個人個人が意識を持ち、ネイチャーポジティブで示されるような生物の多様性、遺伝子の多様性、生態系の多様性などの項目を意識して行動していきたいですね。
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昆虫採集は面白いですが、なかなか難しくなりつつもあるように感じます。悪目立ちしないように楽しんでいきましょう。
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木を蹴るとクワガタが落ちてくるというのも実は彼らの生態を利用したものだったりします。意外と知りませんよね。