気が付くと足が無いクワガタ
クワガタを捕まえて飼育しているとついつい触れ合いたくなるものです。

ふと足に注目してみると足がありません!
クワガタの足の内、特に先端にある跗節(ふせつ)は先がかぎ爪状になっているため、非常に取れやすかったりします。
今回の記事ではクワガタの足の機能と、意外と取れてしまう足を紹介します。
クワガタの足は取れやすい
まず結論ですが、クワガタの足は非常に取れやすいです。

しかし足が付け根から全てが取れてしまうケースというのは珍しく、大抵の場合足の先端にある跗節(ふせつ)が取れてしまうという場合が多いと思われます。
跗節は本来凹凸のある木にしがみつくための役割を持っており、海賊物の映画などでおなじみのかぎ型ロープの先端のような見た目をしています。
跗節を実際に触ってみると分かりますが、非常に柔軟でほぼ360℃ぐるりと回すことができます。

一方で柔軟性に優れる物の耐久性には乏しいことが想像できるかと思います。
強い引っ張る力と、踏ん張る力がかみ合ったとき、引っ張る力の方が強い場合に足が取れます。
イメージとしては人の爪なんかは適しているかもしれません。
伸びた爪の先に強い負荷が載るとある程度は耐えますが、自重が重い足の爪などに体重が載ると剥がれる場合がありますよね。(文字でも痛い)

負荷がかかると取れてしまうのです。そしてクワガタの場合戻ることはありません。
ではどんな場面でそんなことが起こるのでしょうか?
跗節は木にしがみつく機能が大きいです。

クワガタは本来樹液を餌としており、日々木にしがみつきながら食事をします。
樹液の場所は限られているので当然ライバルが訪れ喧嘩をします。
その際に大あごと跗節を使ってまるで相撲の様に取っ組み合いをして、勝者は樹液を得、敗者は投げ捨てられるわけです。

この際に強い力がかかり跗節が取れてしまう場合があります。
しかし捕まえる前は6本満足だったのに飼育中に足が抜けてしまう場合というのも多々あります。
跗節は前述の通り可動域に優れ、飼育環境下では止まり木やひっくり返ったときの起き上がるように木を入れることがありますよね。

また、夜間飛び回る習性があるので、虫かごの蓋などのギザギザしたところに引っ掛かり足が取れてしまうようです。
私自身も飼育環境下では跗節が取れてしまうことは結構体験しています。
中には単独飼育で止まり木がなくても外れた場合も経験しています。
このことから必ずしも足が引っかかる必要はなく、人の関節がその使用頻度によって摩耗していくように、跗節にも使いすぎによる外れが起きるのではないかと考えています。

飼育下で特に多い事故は木に張り付いているクワガタを無理やり剥がすことによって足が取れるという場合です。
ついついクワガタに触れあいたくて木からべりべり剥がすと取れがちです。
この場合には基部から取れる場合もあるようで、カブクワの触れ合いなんかをイベントとしてやると時折根元から足が取れる場合が見つかります。
生き物の視点と想像力を持って触れてほしいものです。
クワガタの足の作り
クワガタの足の作りを見ておきましょう。

意外と注目する機会は少ないはずです。
先端にあるのが跗節。
これは前述の通りかぎ状になっているクワガタの生命線です。

跗節と繋がっているのが脛節(けいせつ)。
あまり語ることの無い部分ではありますが、コクワとヒラタの♀を見分ける際に使われたりする部分です。

そして脛節につながるのが腿節(たいせつ)です。

クワガタはこの部分に黄色い毛が密集しており、いわゆる耳に近い機能があり、振動を感知しています。
それぞれ人の体で例えると跗節が足首、脛節がひざから下の脛、腿節が太ももと言えますね。
その他にも腿節の付け根となる部分などもあり、場合によってはここからすっぽ抜けてしまうケースがあります。

足には各節の境目に関節があり、標本などを作る際に動かしてみると意外と可動域が広いことがよく分かります。
足が無くても大丈夫なのか?
クワガタは部分的に足が無くても大丈夫です。

足が6本あるため、1本欠けたくらいでは死ぬことはありません。
特に飼育下では複数頭を一つの虫かごで飼育していても、ゼリーの数を増やしてあげれば喧嘩を避けることができる可能性が上がるため、食事にありつけないというリスクを減らすことができます。
自然下では足の本数が少なくなるということは、それだけ戦いの上で不利になることなので、生存に不利に働く可能性が高まります。

踏ん張る足が1本減ると、他の足で6本分の踏ん張りをするため、より外れやすくなる可能性も考えられます。
実際採集をしていると足が欠けている個体は1本だけでなく複数個所取れている場合も見つかります。
跗節欠けのレベルは、自然下で採集をしているとそれなりに見つかるので珍しいものではありません。ある意味では戦いの勲章とも捉えられますね。
時には顎の負傷や擦れなんかも見つかります。晩夏や秋に捕まえるクワガタはピカピカの新成虫か百戦錬磨のボロボロ兵士かということが多いです。

足の欠損がトカゲのしっぽの様に寿命に関わるかどうかについてはそれを研究したものは見つかりません。
しかし再生するものでもないので個人的には飼育下では影響はないのではないかと思います。
クワガタの足が物理的に切られる?
自然下での競争はカブクワだけではないため、その他の虫との戦いにより足が切られる場合もあると考えられます。

代表的な候補がスズメバチとカミキリムシです。
この内スズメバチについては2022年に山口大学が発表したプレスリリース、「オオスズメバチVSカブトムシ 最強の昆虫はどっち?」というものの中で、昼間樹液に来るカブトムシの足をスズメバチが攻撃して、木から叩き落す行動をとることが記述されています。

スズメバチがいないと昼間でもカブトムシは樹液に残ることを発見し、実は夜行性ではなかったという発見をしたもので当時話題となりました。
このプレスリリース内では足を噛みきるかどうかについては記述されていませんが、以前スズメバチが樹液に来たカナブンの仲間を外骨格ごとかみ砕いているのを見ているので、足をちぎることも十分可能だと考えられます。

また、カミキリムシについては言うまでもなく噛みきれます。
これは樹液の場で遭遇するカミキリを観察していれば明らかで、彼らは特に樹液の餌場争い時に仲間と激しく喧嘩します。
その際に触覚や足を噛みきるので、特に気性が荒い種においては足が無い、触覚が途中から無いという個体にはよく遭遇します。

こうした外的要因により物理的に落とされているケースもあるかと思われます。
クワガタの足が取れるのには様々な要因がありますが、多くが生存をかけた行動の結果であると考えられます。
飼育下で足が外れてしまうのは残念ですが、その原因を把握しておけば避ける行動が取りやすくなるはずです。
pljbnature.com
カブクワの飼育には捕まえる必要があります。
昨今の樹液事情から種別の捕まえ方などの採集に役立つものから、クワガタは昆虫なの?などの知識を増やすための記事までたくさんのカブクワ周りの肉付けができる記事を用意しています。活用して夏の昆虫採集を楽しんでください。
カブクワ関連記事
pljbnature.com
クワガタのピーク時期となる6月のメリットデメリットなどをまとめたものです。時期の勘違いはかなり致命的なので、夏休み頃から始める予定だった人は修正しておきましょう。
pljbnature.com
今回のスズメバチ以外にも天敵と呼ばれる存在は多数存在しており、おおよそ食べられてしまいます。
pljbnature.com
屋外で脚を見つけたならば、それは付近にクワガタが居る木があることを示すサインとして使えます。
pljbnature.com
都市部の総合的な種の所感はこの記事から。飼育したい、挑みたい種類を選び、難易度を知りましょう。種によってはエリアの選定を間違えると出会えないものもいます。
pljbnature.com
脚を利用した蹴り採集はクワガタにおいて非常に有効な採集テクニックです。脚の仕組みを学んだら活用しましょう。
参考文献
山口大学 プレスリリース オオスズメバチVSカブトムシ 最強の昆虫はどっち?https://www.yamaguchi-u.ac.jp/wp-content/uploads/2022/11/22110804.pdf 2022.11.8,2025.1.15