物騒な異名
血吸いバッタという危ない名前で知られるバッタがいます。

クビキリギスという名前のバッタなのですが、上から見ればなんてことの無いバッタです。
しかしながら普通のバッタのノリで掴んでしまえば後悔することになるでしょう。
クビキリギス(シブイロカヤキリ)とは?
厳密には2種は別種なのですが、似ている虫なので今回はクビキリギスとして紹介します。

クビキリギスは直翅目の昆虫の一種で春~秋まで主に少し背丈のある草地に出現します。
体長はおよそ5~6㎝程で、緑色をしていることが多いのですが、茶色やピンク色のものなどがおり、世間を時折騒がせます。

食性はキリギリスのイメージから動物食と思われがちですが、その出現はイネ科草本に偏っており、主にイネ科草本を食べているとされています。
そのため、都市部のイネ科が少ない環境下では線路沿いなどのススキ群に出現している傾向が見られ、春になると大変賑わいます。
成虫は珍しい越冬をするバッタです。

身近なものとしてはツチイナゴが同じく成虫越冬を行いますが、日本の多くのバッタは秋頃に気温で死滅してしまうので珍しい生態と言えます。
血吸いバッタの異名
クビキリギスですが、血吸いバッタという大変怖い愛称を持ちます。

クビキリギスは実際のところイネ科草本を利用する昆虫であるため、例えば鳥や小型哺乳動物の血を吸うような行動はとりません。
しかしイメージというのは強力です。クビキリギスの口周りには赤く血で染まったものが乾燥してこべり付いたかのような雰囲気があります。
さらに言うとこの昆虫は植物食とは思えないほど噛む力が強く、私自身は噛まれたことがありませんが、知人が噛まれたときには出血していました。

クビキリギスはその名前の由来が首がちぎれるほど離さないことによります。
こういう噛みつくバッタはクツワムシやキリギリスを始め、噛みつくと話さずに頭部がちぎれる場合があります。
きっと子供たちが噛みつかれて思い切り痛みの反動で指を振ったら頭部がちぎれてなお指に噛みついていたんでしょう。
その口の赤さと流れ出る血の赤さから血吸いバッタの異名が付けられたことだと思います。彼らの貧弱な頭部だからこそついた名前ともいえますね。
春の夜にうるさいビー↑という音
クビキリギスですが、その存在を認識することはとても簡単です。

春、イネ科のススキなどが生えている環境に夜足を運んでみれば嫌でもビー↑というようなノイズ音が聞こえてくるはずです。
線路沿いなどを歩く人であれば認識していないだけでほとんどの場合耳にしたことがあるはずです。
クビキリギスは貴重な越冬性バッタであるため、トノサマバッタやショウリョウバッタなどの人気バッタがいない時期に活動をしています。

春先に出てくるイネ科の若芽や若い穂を食べるための戦略なのかもしれませんが、他大型種との餌の競合を避ける戦略と捉えることもできます。
成虫越冬のバッタというのはかなり希少です。夜鳴いている怪しい虫の声を聴いたらその環境に注目してみて、イネ科の草本があるならばまずクビキリギスだと考えていいでしょうね。
クビキリギスを持ってみよう
クビキリギスですが、凄まじく強い力で噛む性質があるため、扱いには注意が必要です。

持ち方については背中が三角形になっているため、上から抑える形で持ってあげるのが有効です。
この際、結構背中が滑るのでうっかり抜けられて噛まれないように気を付けましょう。

安全に観察するならばジップロックが便利です。
扱いにはやや緊張しますが、このバッタの口はかなり強烈でユニークなので一度見て欲しいものです。
ただし子供で噛まれてしまうとトラウマになりかねませんので、十分注意してくださいね。
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