毒々しく危険そうなカミキリ
屋外ではハチを始め危険な生き物が多く活動しています。
その黒と黄色の色合いはとても有効なために多くの生き物に取り入れられているため、初見で赤や黒、黄色などの色合いを見ると身構えてしまうという方も多いのではないでしょうか?
今回のテーマであるキボシカミキリも黒い体に黄色の斑点と非常に危険そうな見た目をしています。
しかし毒はありませんので安心してください。クワやイチジクなどを育てている人にはまさに毒な存在かもしれませんが。
キボシカミキリとは?
キボシカミキリはフトカミキリ亜科に所属するカミキリムシの仲間です。
黒色の体に黄色い斑点を散りばめたようなかなりユニークな色合いをしています。
成虫幼虫共にクワ科の樹木を利用することが知られており、特にクワ、ヤマグワ、イチジクなどを加害することが知られています。
体長は♂♀で大きく異なり、♂では2㎝前後、♀では3㎝前後になります。
カミキリの仲間らしく♂の触覚が非常に長く、目立ちます。
類似種のいない分かりやすいカミキリと言えますね。
キボシカミキリと毒持ちに見せる戦略
実際のところキボシカミキリのカラーリングがハチ擬態なのかは怪しい所ですが、黒と黄色の点で警戒すべきなのは正解です。
今回の記事にたどり着いた方はたまたま見つけた危なそうな昆虫かたまたま色合いが気になった虫というパターンかと思います。
キボシカミキリ自体に毒はありませんが、その警戒は正解です。
というのも自然界の擬態にはいくつか種類があり、とくに有名なベイツ擬態とミュラー擬態の2種があるからです。
ベイツは毒の無い生き物が毒のある生き物の姿を真似るもので、アゲハモドキやツマグロヒョウモンなどが挙げられます。
ミュラーはスズメバチの仲間がほとんど黒と黄色である点や類似にアシナガバチが同じ色をしているなどが例として挙げられます。
危険な虫同士で同じ色を持つことで、配色自体を危険だと思わせる擬態ですね。
これらに合わせればハチっぽい色は警戒しておくというのが自然です。
とはいえキボシの擬態は同種のカミキリの擬態に加えると擬態かかなり怪しい点ではありますが。
写真のヨツスジハナカミキリを見るキボシとちょっとベクトルがずれていますよね。擬態かどうかは不明です。
クワ科害虫としてのキボシ
一部の植物愛好家やクワやイチジクを育てている方にとっては間違いなく毒であるのがキボシカミキリです。
クワ科を食害することが知られており、同じくクワ科を始め多くの樹種を加害するクワカミキリと合わせてクワ科育成の上で障害となる虫です。
キボシカミキリは衰弱傾向にあるクワ科を利用するとされていますが、健康な植物であっても部分枯れから腐朽菌が侵入して樹勢が弱るというケースはあります。
なのでとにかく寄せ付けない管理というのが重要になるわけですが、キボシはクワ科のスペシャリストである上に普通種として身近な存在なので防除するのが大変です。
ここでは彼らの存在を示すサインを頼りに彼らの気配を探知してみましょう。
まずキボシカミキリですが、幼虫~成虫まで全てのステージでクワ科を利用します。
そのため成虫が来ると葉や葉脈、枝の樹皮が齧られるなどの食害が出ます。(いきなり産卵のために飛来する場合ももちろんあります)
なのでこれらに齧り痕が残されていないか注意しましょう。
また、フトカミキリ亜科の仲間であるため、内部から成虫が出る際に丸い脱出痕ができます。
怪しい痕を見つけたならば注意しましょう。
見つけやすい中型昆虫としてのキボシ
キボシカミキリですが、クワ科のスペシャリストということでクワの無い場所ではなかなか見られない昆虫となります。
しかしクワが多い場所ではかなり簡単に遭遇することができる種ということでカミキリムシの入門や昆虫採集の入門としてとてもおすすめできます。
実のところ特定種を食べる虫というのは珍しいものではないのですが、中には結構難しいものも多いです。
そんな中で環境さえわかれば個体数も多く、体も大きく、模様も綺麗なキボシカミキリというのは今後あらゆる虫に挑むための土台としてとても優れていると思います。
昆虫の中にはまだら模様が入っている種類というのはかなり多く、単体では目立ちますが自然の中にいるとかなり溶け込んでしまいます。迷彩効果があるようで意外と見事なものです。
桑利用のカミキリにはトラフカミキリやイッシキキモンカミキリなど魅力的な種類も多いので興味が湧いた方は探してみてください。
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