目を引く緑や赤のトウモロコシ
初夏から秋ごろにかけて雑木林などの自然のある環境を歩いていると、粒の大きなトウモロコシにそっくりな緑色と赤色の毒々しい実を発見することがあると思います。
トウモロコシ!ラッキー!と思って口にしないよう気を付けてください。
その植物は春に奇妙な花をつけることで人気のあるマムシグサやテンナンショウなどの仲間の果実です。
サトイモ科の果実である毒々しいトウモロコシには、毒というよりは物理的に厄介な成分が含まれており、口にすることはもちろん触れることにもリスクがあります。
テンナンショウの仲間とは?
テンナンショウの仲間はサトイモ科に所属する植物です。
他の植物と異なる異質な姿をしていることから人気のあるカテゴリーです。
花期には仏炎苞(ぶつえんほう)という大きな袋様の苞があり、真のお花はこれに包まれる形で存在しています。
仏炎苞からは大抵棒状の突起が飛び出ており、これは花粉媒介を手伝うキノコバエの仲間などを苞内部に案内するための道しるべとして機能しています。
苞には雄株には花粉運搬のために出口が用意されていますが、受粉のための雌花には出口がなく、突起を伝ったハエの仲間は受粉の後には脱出できず死んでしまうようです。
花期は早春~5月程度のものが多く、開けた場所というよりは半日影環境で水分が多いような環境で見かけます。
身近な代表種はミミガタテンナンショウで、春にあらゆる日陰環境で見つかります。
尾瀬などのミズバショウやザゼンソウ、植物園のショクダイオオコンニャクなど植物好きからするとお馴染みの植物も同じ仲間であり、食利用されるコンニャクやサトイモなども同じカテゴリーです。
緑や赤のトウモロコシが見つかる時期
やたら目につくトウモロコシですが、身近な場所や低山地で見かける場合にはおよそミミガタテンナンショウ、マムシグサ、ウラシマソウ、ムサシアブミのいずれかになると思います。
私の写真はミミガタテンナンショウのものですが、いずれも大きさや形など多少違えども雰囲気は同じです。
緑のものと赤色のものについては果実の熟れ具合が関わっているようです。
通常花後にできるものは若い緑色の果実です。時期としては花後の5~7月程度。
真夏頃から熟し始めて赤色の部分が増えてきます。自然界では赤色の実や緑色の実はとても多いのですが、これらの仲間の果実には地上から突き出た柄が必ずついています。
まるでトーチのように立っていますのでそれを参考にすれば間違えません。
果実の毒について
サトイモの仲間に共通するものとなりますが、彼らはシュウ酸カルシウムという成分を含みます。
シュウ酸といえば料理をする方などはお馴染みかもしれませんが、ホウレンソウに含まれるシュウ酸ナトリウムや紅茶に含まれるシュウ酸という成分がありますよね。口がキシキシする成分です。
この成分がカルシウムと結合することでシュウ酸カルシウムとなります。シュウ酸カルシウムは3大痛い病気に含まれる尿路結石の原因となることからも分かるように針状の物質の集合体です。
サトイモ科には結晶化していませんがこの成分が含まれているので、汁などに触れるとその部位が刺されたような痛みが発現することが知られています。
ぬめりらしいのですが、皮膚に刺さり、喉などが炎症を起こして窒息を引き起こす等かなり重篤な症状が出るとされています。
尿路結石に近い痛みが知るの触れた場所に起こると考えるとかなり恐ろしいものですね。
実は我々は身近な生活でシュウ酸カルシウムを体験しています。これも料理をする方や一部の食べる方は経験があるかと思います。
ヤマノイモや長芋ですね。すり下ろしたときや切ったときに手がかゆくなる経験をした方もいるのではないでしょうか?
また、口の中がかゆいなどの経験もありませんか?ヤマノイモはヤマノイモ科で科としては異なるのですが、シュウ酸カルシウムを含んでいるんです。
なのでこの経験があるとテンナンショウの実を食べた時の被害がこれを甚大にしたものであると想像しやすいかもしれません。
サトイモ科とコンニャク
身近な例でいうとこんにゃくもサトイモ科だったりします。
植物名でショクダイオオコンニャクが出てきていましたが、そこから想像がつきますよね。
コンニャクはコンニャク芋が持つシュウ酸カルシウムを灰汁で無毒化したものです。
シュウ酸カルシウムは熱に弱いことが明らかとなっており、コンニャクを始めサトイモなども過熱することが多いのはそのためではないかと推測できます。
科が違うヤマノイモが生食できる要因は不明です。含有量の違いでしょうか。
タイトルの結論としては美味しそうな緑と赤色の実には毒があり、それは我々の生活の中でコンニャクやサトイモなどの形で既に利用、体験しているものであることが分かりましたね。
webの世界ではあえて食べてみた方などもいるようなので興味のある方はどんな感じなのか読んでみるといいかと思います。
このように目につくよく分からない植物であるテンナンショウの仲間の果実は、馴染みが無いだけで我々の生活に深くかかわっていたり、それらが持つ性質を理解することでその恩恵を受けていたりします。
これこそまさに自然観察が楽しいと思える由来です。身近なもののなぜ?を掘り下げることがそのものを単体で見るのではなく、自然を含めた生態系というより広い視点で見るミクロな目を鍛えることにつながります。
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