飼育している植物の葉が欠けている!?
およそ春から秋ごろにかけて植物の葉が丸く切り取られている場面に遭遇することがあります。
植物の葉をこのように利用するものとしてよく知られているのは幼虫の仲間だと思います。
しかし自然界には一風変わった葉の利用をするものもいます。
今回の記事では葉を切り取って持ち帰るハキリバチの仲間とその症状を幼虫のものと見比べてみようと思います。
ハキリバチの症状とは?
まず肝心の症状を見てみましょう。
ハキリバチにより切り取られた葉にはおおよそ葉の縁から丸い形にきれいに葉が切り取られている場合が多いです。
幼虫による食害の場合も葉の縁から同様にかじられるケースが見られますが、食害の場合植物において葉が部分的になくなっていることも多いこと、被害の見られる葉の周辺に幼虫本体がいることも多いこと、植物下に糞があることなどの点から見分けられます。
ハキリバチが葉を持っていく理由は巣材として利用するためです。
種により特定の科の植物を好むなど傾向が見られる場合もありますが、広く持ち帰る場合もあります。
そのため、食害のように葉が丸々すべて持ち帰られてしまうということがないので、丸い切り痕が点々と見られます。
ハキリバチとは?
ハキリバチはハキリバチ科の昆虫で、主に木や竹などの隙間に巣を作ることが知られています。
ハキリバチの仲間にはいくつかの種類がおり、身近なものでは3cm近い大きさの大型種なども存在しています。
写真のものはオオハキリバチという種類で小型のスズメバチくらいの大きさがある巨大種です。
名の通り営巣場所の中で巣を作る際に巣材として葉を使うことが知られており、時折緑の葉を加えた奇妙なハチを見たことがあるという方もいるはずです。
同じく営巣場所として木々や竹を利用するカリバチの仲間やクマバチのように巣を選定するような独特の飛行を見せます。
このためか人の周りをしつこくつきまとってくる行動も見られます。
葉にできるいろいろな痕を比較
ここからはお庭などの植物に見られる痕を紹介していきます。
特に園芸人気の高いバラを利用するバラハキリバチなど特定樹木に被害が集中することがあります。
典型的なマバラな丸い切り痕を覚えておけば前述の通りハキリバチの被害かどうかの判断は簡単です。
ハキリバチの切り痕が連続するのに対し、幼虫の場合丸い食害はあまり残しません。幼虫は成長のために葉を食べているので葉をきれいに食べるのも前述のとおりです。
しかしながら自然界において幼虫の天敵が多いために葉を食べたものの幼虫自体も捕食されてしまったという場合にはハキリバチの食害のような切り痕が残されることがあります。
この場合、進行中かどうかを判断するために切り痕が後日増えるかどうか?を見分けることでハキリバチのものか幼虫に食われたのかがわかります。
また、植物の葉には縁からではなく途中から丸い穴が空く例などもあります。
これらはハムシによる食害でよく見られるもので、典型的な例としてはスイカやきゅうりなどウリ科に付くクロウリハムシのものが挙げられます。
食害による抵抗物質を防ぐために植物繊維をサークル状に噛み、繊維を破壊したうえで内部を食べるという戦略であるため、被害時には薄い白線の丸模様と中心に穴が空いているはずです。
葉の食害を防ぐには
ハキリバチや幼虫どちらも大事な植物の葉を減らしていしまいます。
この内幼虫であるならば収穫前の作物を除いてオルトランを始めとする浸透移行性の農薬が効果的です。
一方で葉を食べるわけではないハキリバチの仲間にこれらの農薬は有効ではないと考えられますね。
とても大事な植物であるならば目の細かいネットで作を作ってガードしてしまうというのも戦略としては有効です。
ミカンや紅葉などの害虫としてよく知られるカミキリムシの対策として目の細かいネットを使うという戦略がありますが、物理的な遮断というのは手間がかかる分非常に有効です。
とはいえハキリバチも気まぐれであり、付近で営巣時には被害が大きく出ますが、年によっては来ないなんてこともあるはずです。
大量に来ているようでないならばカミキリムシに比べれば被害は控えめなものなので見逃してあげるのも手だと個人的には思います。